アマゾン吾郎さんが「中央突破の美学に彩られています」と指摘なさっているとおり(新装版の第一巻のレビュー)、本作の龍馬の真骨頂はまさにそこにあります。数々の小説やドラマの中にそれぞれに魅力的な龍馬が登場しますが、この中央突破ぶりから来るスケール感は突出しているのではないでしょうか。
そしてその美学と小山ゆうの絵の相性がいい。自分は小山ゆう氏の絵は好みではないのですが、本作に関しては惹き込まれました。そのまっすぐな感じに。龍馬以外の強烈な登場人物たちの大胆なかき分けも魅力的です(本作の弥太郎を見てしまうときっと他のどの作品の弥太郎にも満足できなくなると思うよー)。
また本作の龍馬の大きな特徴は作品の中でぐんぐん成長していくことです。キン肉マンやドラゴンボールなどの週刊連載のヒーロー漫画と同様、次の週にはどうなるか分からない、作者の手を離れて主人公が勝手に肥大化していくような感じ。これがヒーロー漫画だと肥大化しすぎて終わらせ方に苦労しがちですが、本作では肥大化がゆきすぎるまえに龍馬が死んでしまいます。なので結果的に龍馬の持つダイナミズムばかりが印象として残ります。
龍馬ファンで本作を未読の方はぜひ読んでみてくださいな。失礼ながら自分、武田鉄矢氏は役者としては大好きなんですが、龍馬に関しては龍馬(がゆく)バカのおじさんだと思っていました。でも役者としての凄み同様、クリエイターとしても豊かさを感じさせてくれます。『龍馬がゆく』の二番煎じなんかじゃありませんよ。中央突破な龍馬はもちろん、ほかの登場人物の性格づけも史実の隙間を埋めるストーリーもオリジナル。魅力的な龍馬作品です。
ちなみに自分は文庫版で読んだけど絵が小さいのが残念。できればワイド版の方がいいと思います。