帯には、「日本人には役に立たない『金持ち父さん 貧乏父さん』は今すぐ捨ててください!!」とあるが、その意図は、税制をはじめとした日米間の環境の相違にある。日本の投資環境を考慮に入れながら、世界にひとつしかない金持ちの方程式「資産形成=(収入-支出)+(資産×運用利回り)」の実践法を説くあたりは、さすが専門家をもうならせた『ゴミ投資家のための人生設計入門』の執筆者である。金融業界や不動産業界の関係者が決して口に出せない「見えないコスト」も含め、合理的な資産運用の考え方を説いている点も、本書の魅力であろう。
扱われているトピックは、不動産、株式、保険、税金、海外投資、PT(永遠の旅行者)と、じつに多岐にわたるが、そのすべてにおいて、実践的な考え方が示されている。あえて問題点を挙げるとすれば、実践的であるがゆえに情報が陳腐化しやすいということだが、税率や手数料の変更など、細かな点を修正するのは読者の側の責任であろう。
著者によると、20世紀を席巻した産業化社会は終焉を迎え、21世紀は「知識社会」の時代になるという。この「知識社会」とは情報化社会とも言い換えることができるが、知識が特権的な価値を持つ社会であり、必要な情報を的確に入手し活用できる人は近道ができるが、そうでなければ回り道をするしかない。われわれを取り巻く世界の歪みを上手く利用した人は、合法的に莫大な富を築き、「システムの負の側」を歩んだ人は、人生の貴重な時間やお金をどぶに捨てることになるのである。
人生の近道を歩むために、平均的な日本人がどうやって人生設計すればよいかを、本書は懇切丁寧かつユーモラスに解説している。日本国の危機をいたずらに煽(あお)るだけの本が多いなかで、その危機や歪みに対して我々がいかに対処すべきかを示した、希少な1冊である。(桜田清二)
書店には、金持ちになるための本が溢れている。「資産運用の成功術」「株で1億円儲ける」といった類の本を「馬鹿馬鹿しい」と思いつつ、目次くらいはのぞいてみる。これまでの“金持ち本”の内容は収入を増やす・支出を減らす・資産運用──の3つのノウハウに大別されるという。
本著が既存の金持ち本と異なるのは、収支の適正化や資産運用の成功法を示すのではなく、「社会システムのダークサイド(負の側)を歩かない」ための知識に重きを置いた点だ。サッカーワールドカップのチケットを買うのに、ひたすら電話をかけ続けても1枚のチケットも入手できなかった人と、インターネットや海外の代理業者を活用して優雅に観戦ツアーを楽しんだ人との差は「知識」であると、著者は例示する。
「日本の制度は大きく歪み、そこから『黄金の天使の羽根』と呼ばれる恩恵が生じている。少し工夫すれば恩恵を手に入れ、余裕ある生活ができる。今後の知識社会では、この『羽根』の存在に人より早く気づくことが経済的成功への第一歩」というのが著者の主張である。
前半では主に不動産、生命保険など、私たちが人生設計をする際に必要な基礎知識を、後半では年金や税など国の制度の歪みや矛盾について解き明かす。「現在の完全失業者350万人のうち、家族を抱え、職を失って途方にくれる『救済すべき真の弱者』はわずか20%で、その他は緊急性が低い。雇用保険制度は莫大な金を不正受給者にばらまいている」と、制度についての批判は手厳しい。著者は、日本の諸制度の歪みから恩恵を受ける人がいる一方で、収奪される側がいるとし、制度を維持し続ければ、両者の格差はますます拡大し、いずれ修復不可能になると警鐘を鳴らし、読者に「恩恵を受ける側か、収奪される側のどちらを選ぶのか」と問いかける。
収奪される側にならないためには、何よりも知識を獲得すべしというのが、全体を通して一貫した著者の主張だ。不動産、生命保険などに関して、これまで常識とされていた内容に明快に反論をし、社会保障や税などを通じて、国家と個人がどうつき合うべきかについて考えさせてくれる興味深い1冊である。
(東洋大学経済学部助教授 白石 真澄)
(日経ビジネス 2003/01/27 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
登録情報
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最近では年金未納と江角マキコの年金CM問題が大きく取り上げられていましたが、本書ではそれに先行して税制・健康保険・年金制度に横たわる自営業者とサラリーマンの間にある大きな溝について詳しく解説しています。
厚生年金の保険料を実質的に破綻している国民年金に流用しているため、国民年金は投資(保険料)に対するリターン(年金)が非常に有利であるという事実・・・社会保険制度の病巣の深さを思い知らされます。
本書は決してタイトルにあるような資産形成の本ではありません。
国家という透明無垢な存在を介して、その制度により搾取される側とそれを貪る側に分かれる事実がありのままに述べられています。
はっきり言って読んでてかなり暗澹とした気分になりますが、それでも一読することをお勧めします。(--
ということで、筆者の主張にも合致するのだが、「専門家(であると主張するる人)の言うことを信じるな」というドグマは、この本にも当てはまる。細かいミスに過激に反応している人も多いようだが、全体を貫く主張、「制度に盲目的に従っていると、毟られるだけだよ」、「世の中には、頭を使ってちょっとリスクをとれば、こんなにもうまい話がころがっているのだよ」は、極めてまっとうで、金融リテラシーが低く、お上のやることには盲従する傾向の強い、日本人には、強ーく進めたい啓蒙書であると思う。
いくつかの読者書評が指摘する、「金儲けの方法が書いていない」というのは、当たり前の話である。どこの世界に、読むだけで金儲けができる本があるというのか?(あれば教えてくれ!)ただし、こうすれば絶対失敗する、という方法はあるのだ。負けを減らす手段を、セコイと思うかどうかは個人の判断である。私は、セコかろうが、性格がひねくれようが、少なくとも毟られる側には絶対なりたくない。結局、どんな博打(人生も、喩えではなく、間違いなく一つのバクチ(相場観)である)でも、負けが少ない人が最後に勝つのである。
個人的には、年金についえ語ったセクションに、身の毛もよだつ思いをしました。日本の制度は、本当に崩壊しかねない、と思った。
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