「お言葉ですが・・・」は、週刊文春に1995年5月から10年余りにわたって連載されたエッセイを1年分づつまとめて単行本化し、更にそれを何年後かに文春文庫の1冊として出版した長寿シリーズの第5巻である。その人気の源泉は著者の該博な知識とユーモアたっぷりながら鋭い言語感覚にあることは言うまでもないが、加えて読者を巻き込んだ今はやりの「双方向的」議論もまた魅力の1つである。さて、どの巻をとっても面白いが、この巻のタイトル「キライなことば勢揃い」を例に挙げて、その面白さを説明してみよう。このタイトルをもつ文章は、’99年11月25日号に掲載されたもので、内容はそのおよそ1ヶ月前の10月21日号の「ふれあい図書館」で、読者に「『ちかごろキライなことば勢揃い』をやりましょうか」と呼びかけたのに応じて読者がさまざまな「キライなことば」を投書した、それらを著者のコメントと共に紹介したものである。そしてまた、1週おいた12月9日号でそのつづきとして「みんな仲よくあたたかく」を書いている。これらを読むと、週刊文春の読者(少なくとも「お言葉ですが・・」の読者)は、レベルが高いなあ、と感心する。これだけの人びとが著者の呼びかけに応じて、楽しく(と評者には思える)著者に手紙を書くのは、それだけで、このエッセイの面白さがわかるというものではなかろうか。つまり、このエッセイには、読者を「私にもいわせて」とさそう魅力があるのだ。
また、このシリーズの特徴は、週刊文春執筆中に読者の手紙を取り込んだばかりではなく、その話題が終わってからも読者の手紙やその後の知見を補って、単行本出版時にその文章の後に「あとからひとこと」という小文(ときには数頁にわたる)が追加され、またさらに、単行本の読者が書いた手紙が文庫本でつけ加えられることもある。つまり、「お言葉ですが・・・」のシリーズについては、文庫本がもっとも内容が豊かなのだ。どうぞ、ご一読ください。