2004年に出版された仏語の原書が、一年以内に(英訳より早く)和訳されるというのは驚異という他ない。訳者の熱意には頭が下がる。装丁もポップでお洒落であり、つい買いたい衝動にかられたのは私だけではないだろう(実際買ってしまった)。しかし、この本(そして翻訳)の評価は大きく分かれるに違いない。
さすがにベストセラー『世界食物百科』の著者だけあり、読者の興味を引きそうなエピソードや図版、年表の配置は見事である。適度にコラムやレシピを散りばめ読者を飽きさせない工夫がされている。しかし、前掲書に対して米国の読者がたびたび不満を漏らしていたように、細部の不正確さや、いかにも「おフランス」的な語り口は今回も健在である。
第6章「世界の菓子」において、和菓子を全く無視するといった不遜さは大目に見るとしても、隣国イギリスの菓子に関する知識が大雑把過ぎるのは見逃せない。例えば、「バンケティング・スタッフ」は「お菓子の時間」ではなくお菓子類そのものだし、Gervase Markhamを「ジェーベス・マルカム」と呼ぶのもどうかと思う(p.40)。それに、マーカムの著書『イングランドの主婦』を、フェミニスト的文脈でイギリスの菓子の伝統を民衆と女性の文化に初めて結びつけたポジティブな例として取り上げるのは(p.381)かなり乱暴である。
この本から引用するには極めて勇気がいることだろう。しかし、ただお菓子(特にフランスの)についてあれこれ読みたいという人にとっては、興味深い読み物となるだろう。