中年以降に読むとよくわかる味わい深い作品です。
以前、角川文庫で読んだものの途中で投げ出していましたが、行方氏の訳が出たので早速読みました。
もともと小説というより自伝的随筆のような本なので、いきおいタラタラとしたものに陥りやすいのですが、それをうまく語らせるように訳出されていて見事です。
ただ、ドリフィールドさんのレビューにあるように2〜3の誤りはあります。特に、アシェンデン少年が初めて自転車に乗るシーンで、原文で
"Go it, go it, two to one on the favourite"
となっているところは、行方氏の訳ではしっくりきませんでした。
また、24章の初めに、ケント州によくある名前として、ガン、ケンプ、コッブ、イガルデンと書きながら、最後のところで、ロウジーがニューヨークにいるアシェンデンによこす手紙の名前(変名)がイッグルデンとなっていてイガルデンとは違う名前のように書かれているのはいただけませんでした。名前のカタカナ表記にはもっと注意が必要でしょう。
この2点にひっかかったほかは、読むのがきわめて楽しく、ゆっくりとモーム特有の皮肉とユーモアを味わうことができました。