茶道の教本はたくさんあり、もちろん教本を通じてお点前の方法をしっかりと学ぶのも楽しいのですが、この本には方法のみならず、茶の湯の精神を自然に取り入れて生活することの楽しさが丁寧に書かれています。
深澤里奈さんは茶の湯の師範でありながら、「茶の湯を習っているお友達」のような視点で、「身近に茶道があるとこんな風に心が豊かになるよ」ということを決して押しつけがましくなくえがいています。読者は素直に、「茶の湯を楽しむようになると、日々の生活がこんなに楽しく、美しく、充実したものになるんだ!」と、知ることができます。茶道というと、着物を着た先生に厳しくビシバシと鍛えられる、というイメージが強いのですが、現代の生活にもこんなに軽やかに取り入れることができるのかと、目から鱗が落ちます。
単に深澤里奈さんの「ライフスタイルご紹介」の本では決してありません。ブログの記事をまとめた本でもなく、とても丁寧な本です。未来や過去よりも、今このときを大切にする、という姿勢を学びました。自らの生活を省み、より自分と向き合えるようによりよくしていきたいと思わせてくれました。わたしを含め、震災後に「日々を積み重ねて生きていくこと」が決してあたりまえではないということに気付いた人も多いと思いますが、今の自分を少し変えたい人が、ずっと手元に置いて、折に触れて読み返したいと思わされる本です。