能の参考書を買うくらいなら、舞台をひとつでも多く見たほうがいいなあと思ってはいるのですが
能面の解説が素敵だったので購入しました。
主観的な意見も沢山記載されていますが、キャリアに裏打ちされた実感を伴っているし、なにより
時代が離れている分、生々しくてうっとおしいとかいう余計な感情が入ってこないので、
女性ならではの感覚的な表現がかえってわかりやすくていいと思います。
この本には出てこなかったですが、「お能とは丸いものである」という白洲正子さんの言葉が好きです。(たしか
それぞれの人にそれぞれの世界を与えるみたいな意味だったと思うのですがうろ覚えです)
いろんな能評論があって、読んでいると「亡くなった人を褒めているけどもう見れないしなあ」とか
「そうじゃないといわれてもそういう風には感じられない自分ってピントがずれてるのかなあ」とか「能を習わなきゃだめなのかなあ」とか
時には「生活態度がきちんとしていないと能を見る資格はないのか」とまで思います。
芸術とかって距離を置くと癒しになるけど、近寄ると精神性がどうのこうのと結構疲れるところがあります。とても崇高な部分とどうしようもなく俗っぽい部分が共存している世界に惑わされたり、舞台と自分のチューニングが合わなくていらいらいしたり。楽しいし娯楽のはずなのになぜか大変だったり。
そういう初心者と一緒に連れ添ってくれる姿勢、
うろうろとあっちに行ったり戻ったりしながら観ていきましょう、そういう序文もとても好きです。
こうでなければならないという見方はないけど、知識は多いほうがいいという考え方もすっきりわかりやすくて好きだし、
古いもの、時間によって磨かれてきたものに対する尊敬の気持ちも好きです。
そして小さいころから能をたしなみ、プロ並みの腕前であったのにもかかわらず、女には能はできない
とすっぱり言い切る潔さもかっこいい(これもこの本とは関係ないのですが)
つらいことも多かったと思いますが、決して人を批判することだけで充足してしまわず、自分にとっての美を追い続けるところがすごいと思います。
心があさっての方向に行ったとき、そっと軌道修正してくれるような、素敵な本だと思います。