舞台は19世紀の中頃、東欧某国の片田舎に建つオルレーユ城。そこは吸血鬼を主とする、人ならざる者たちの住処。
ある日のこと、法王庁のクルセイダーがやって来るという知らせを受けて逃げ出した主から留守を任されたバンシーのアリアと城に住む人ならざる者たちの日々を描いた小説、なんて書くとホラー物かと思う方もいるかも知れませんが、実際はホラー風味のファンタジックコメディーとでも申しましょうか。
城の住人たち──デュラハンはマゾっ気ありの変態だし、サキュバスは人前に肌を見せることをはしたないと思ってしまう清楚ぶりだし、ガーゴイルは丸々と太ったペンギンのようにコミカルな外見の上に気も弱いし、リビングデッドは服や仮面で腐った外見を隠していて庭師という具合で、有り体に申せば「らしくない」。強いて言えば若さを求めて少女の体を乗っ取る魔女がいますが、外見と性悪な老婆の口調のギャップがむしろグッジョブ! そして何より主人公であるバンシーが実に愛らしい少女の姿ですから、怖くなんてありませんし、むしろユーモラスとかキュートに感じることでしょう。
ちなみに主人公のアリアは表紙の絵だけ見るとメイドと思うでしょう。確かに作品を見るとメイドがやるような洗濯や台所のお仕事もしておりますが、主人は物語の最初で高飛びしてますから、ご主人様に色々ご奉仕するシーンを期待している方には肩すかしかも。まあ、それを抜きにしても肩の力を抜いて楽しめる作品と言えるでしょう。