江戸の町人の風俗を思うとき、そこにある種の理想郷があるような気がしてくる。環境問題だとか、リサイクルシステムだとか、食の安全だとか、老後の生活だとかを議論するときに、諸外国のあり方もそうだけど、まず、日本の文化がある意味一番花開いたであろう、江戸の生活様式を振り返って見るべきだと、思うのです。女性が思いのほか強くて、恋愛に関してもごくドライでしゃきっとしていて、とても気持ちがいいです。
内容的には、同出版社の「一日江戸人」と同じく、江戸の町人、主に長屋の住人であるところの、大多数の生活を紹介するものです。
「一日江戸人」が、読者に対して、これでもか、これでもか、と、我々現代に住む日本人の思いこみ的江戸イメージを拭い去るというか、本当の江戸風俗はこうだったんだよ、と、力一杯、啓発的に書かれている一方、
本書は著者の気負いのようなものはもはやなく、手取り足取り、親が子に噛んで含めるように、ていねいに親切に、江戸の生活をのびのびと描き出している点で、とても素敵だと思う。
長屋住まいの江戸っ子は、いずれ火事で燃えてしまうから家具や調度品には執着せず、「消え物」にお金をかけたそうです。物欲的な豊かさよりもこころの福を大切にしたそうです。
「こころ」の豊かさを探してみてください。