可愛げがあって無邪気、といえば聞こえがいいけれど、別の言い方をすればマザコンで甘えん坊で無神経な、でもにくめない御曹司、涼。そんな涼を夫に持つ、どこか飄々とした自立した女、風里。風里がひそかに『マダ〜ム』と呼ぶ、おしゃれで美人で若々しい義母。バブルな香りいっぱいのお金持ちの生活、おいしそうな朝食、由布院、温泉つきの別荘・・・何も考えなければ幸せいっぱいでノンビリ暮らせるのに、風里は能天気なふうでいて、何かを考えてしまう。
御曹司が一般家庭の娘を嫁にもらった理由、涼の過去、マダムたちの私生活。ドロドロとしがちなドラマも、田辺氏にかかると「それもありかも」と愛しく思えるから不思議である。小説のあちこちで出てくる小物(万華鏡など)も、見てみたくなるほど魅力的に描かれている。この小説を読んで、湯布院にも行きたくなる。何度も読みたい一冊である。