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例えば著者は、お寺と檀家との関係を、宗教サービスを提供する側とそのサービスを購入する消費者との関係に置き換えて見せます。そもそも檀家制度はキリスト教徒弾圧のために幕府が導入した政策です。この制度のもとでお寺は長期的な固定客を確保することができ、また檀家はキリスト教徒である疑いをかけられずに済むというサービスを享受できたわけです。
しかし近代化の過程で、檀家と地域社会との長期的関係が崩れ、それに伴って檀家は寺の固定客ではなくなっていきます。寺の経済基盤は今後弱まる一方です。
新たな信者を確保するためのサービスをいかに生み出すか。そのためには現世利益という、これまで仏教界が難色を示してきたサービスも、顧客ニーズに対応する手段として必要なのではないか、という具合に本書は、経済学の視点から仏教活動に提言をしていきます。
本書にはお墓の値段や僧侶の年収といった生臭い数字が羅列されているのではないかと想像しながら頁を繰り始めたのですが、そういう類いの書ではありませんでした。
慶応大学商学部の教授である著者自身がまず仏教についてきちんと学び、その上で日本各地へ、そしてタイにまで足を運んで仏教関係者を取材したことがうかがえ、その真摯な姿勢に好感が持てます。
仏教には「方便」という用語があります。真の目的のために便宜上用いる手段、という意味です。本書の場合も、経済学的解析は、寺院側のみならず信者側にとっても最も好ましい道を探る上での「方便」といえます。であれば、本書は大変意義深い書物になっていると私は感じます。
空海や日蓮などの有名な僧侶が
江戸時代以後、歴史に名を残していないのは何故か
昔から疑問に思っていたのですが、
本書によって理解できました。
寺院経営という面から見れば好都合な「檀家制度」が
いつの間にか仏教の弱体化を招く一方、
それに気づいていながら脱却できないという
現代のお寺が抱える問題を非常にわかりやすく
説明してくれます。
お寺参りが趣味の私にとって謎だった部分が明らかになり、
大いに役立った一冊でした。
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