(説明不要だが)名シリーズ『男はつらいよ』で寅次郎の妹さくら役をつとめた倍賞千恵子による一冊。書名から察せられることとはちがってみずからの自伝が記述の中心となっているが、俳優・渥美清との人間同士としてのつきあいがところどころにおりこまれている。
本書の序文をなす大船撮影所での「お別れ会」で読まれた倍賞氏による追悼文には涙を禁じえないし、寅さんの面影がはっきりと刻印されている氏ならではの裏エピソードはひじょうに楽しくよめる。が、いかんせん自伝的な要素が強すぎて、もっと寅さんについて、俳優・渥美清について、あるいは『男はつらいよ』シリーズの舞台裏について書いてほしかったという意味では、期待はずれであった。
また、「さくら」のイメージを崩したくないひとは、覗き見精神をすこし抑制して、本書を読まないほうがよいであろう。