フランスからやってきた、自称ナポレオンの子孫・ガストンが主人公。彼の日本での生活ぶりを愉快に書きながらも、遠藤のイエス観を投影しています。つまり、損得勘定をせず、人を疑わず、信じきる・・・・宮沢賢治の「雨ニモマケズ」にでてくる「ワタシ」のような人間であり、周囲の人間からは「ばかだね」と言われそうな人間です。遠藤のメッセージはおそらく、「イエス的に生きるということは、バカになることだ」ではないでしょうか。実際、遠藤がモーリヤックとよく比較の対象とするジュリアン・グリーンには"God's Fool"(この場合、Foolはアッシジの聖フランシスコを指す)という作品がありました。題名が「バカ」ではなく「おバカさん」なのは、ガストンのような人間へのあたたかい眼差しがあるからでしょう。イエス的生き方をするおバカさんに、限りない愛情を注ぐ遠藤がみえてきます。