『おろち』が秋田文庫で発売されていたことは知ってましたが、入手困難なのと文庫で絵が小さかったこともあって、長らく購入していませんでした。これに限らず、楳図先生の漫画は描きこみが細かいので文庫で線が潰れてしまいそうなのが難点です。
しかし、このたび楳図perfectionとして見事に豪華な装丁で復刊されました。正月にこのことを知った僕は、急いで本屋に行って四冊まとめて購入しました。少しも惜しくなどない!です。
内容は素晴らしいの一言です。『姉妹』では美しいままでありたく、また、そのために強烈なエゴイズムを抱える女姉妹の心理が今のどんな漫画よりも深く描かれており、その、特に終盤に集中した怒涛の展開には驚かされます。なんだかんだ言って一番『おろち』らしい話なのではないでしょうか。
『骨』は夫を失った、不幸な境遇で育った妻と、おろちの力により復活を遂げた夫の話です。「なぜここでこんな行動するの?」といったんは思わされる登場人物の言動は、少し本を持つ手を止めてじっくり考えてみると「しかしこれが人間の心理なのかもなぁ」とため息をつかされたりします。
特異な力を持っているおろちは、人間を不幸にするわけでもなく、むしろ激情にかられる人を制止するなど真っ当な存在に見えます。たまに「なんでこんなおせっかいを……」と思わされたりもしますが、そこはご愛嬌。かえって作中に登場する人物の方が一層残酷に、しかし時にはやさしく映ることでしょう。
映画化も決定している(別物として楽しむことは百戦錬磨の楳図ファンの間では暗黙の了解かと思いますが……)ので、とにかく唸らせるような漫画を読みたい方にオススメです。
楳図作品の入門として読むならこれか『漂流教室』かと思います。
しかしこれ、少年サンデー連載だったんだよな…うん。