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おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1)
 
 

おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1) [文庫]

井上 靖
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1) + 大黒屋光太夫 (上) (新潮文庫)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

鎖国日本に大ロシア帝国の存在を知らせようと一途に帰国を願う漂民大黒屋光太夫は女帝に謁し十年ののち故国に帰った。しかし幕府が報いたものは終身幽閉だった。歴史文学の力作長篇。解・江藤淳

内容(「BOOK」データベースより)

1782年、船頭大黒屋光太夫ら17人の男と、廻米・木綿等を積んだ神昌丸は、伊勢から江戸へ向かった。狂騰する波涛に弄ばれ、8カ月後、彼らが流れ着いたのは、北の果て、アムチトカ島だった。望郷の思いに、ひたすら故国への途を求め、彼らは極寒のロシアを転々とし、終にはペテルブルグへ。出帆から、10年近い歳月が流れていた―。鎖国の世、異国へ渡った男たちのロマン溢れる冒険譚。大映映画化。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 382ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (1974/01)
  • ISBN-10: 4167104016
  • ISBN-13: 978-4167104016
  • 発売日: 1974/01
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 これぞ長駆小説の決定版, 2009/3/21
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レビュー対象商品: おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1) (文庫)
この作家の小説には長駆小説という分野がある。主人公が図らずも、遠大な行程を移動する物語である。例えば「蒼き狼」とか「敦煌」とか、また遺作の「孔子」もそうかもしれない。そういう意味で、この小説はその分野の決定版であるといえる。
まず、その長駆に確固たる意思がある。決して放浪でも転戦でもない。その意思というのは、主人公の大黒屋光太夫の、ただひたすら生国に帰還せんがためである。そして逆説的に光太夫は(母国や家族を)思うまじ、考えまじ、と努めるのであるが、その不屈の精神ゆえに、かれは多くの同胞を失った後も生き残り、帰還を果す。同じく生き残った磯吉と共通するのは、前述の強い意志とともに、その置かれた環境に馴染み、溶け込むということである。
次に、長駆する過程の詳細な描写がある。そもそも序章で、漂流日本人とロシアの歴史を長々と解説されているように、これはただ虚構としての伊勢漂流民の物語に留まらず、むしろ記録小説的な色彩が強い。それは主人公の光太夫の詳細且つ的確な記録のお陰でもあるが、それを作者が淡々と、なんの企図もなく書き上げているところがすごい。とかく感動させよう、泣かせようなどと、クドクドと書き立てる小説が目立つ昨今、これは誠にすばらしい。しかしそうは言っても、僕がおおいに落涙した箇所が二つある。それは徳間書店文庫本の281ページ、ペテルブルグ郊外の娼家で、娼婦が歌う場面と、同326ページ、光太夫が庄蔵に暇乞いする場面である。これは人間ならば誰しも泣かずにはおけまい。
とにかくこれは、この作者の作品の中でも、最高傑作といっても過言ではあるまい。カミュの「ペスト」のリウーのような不屈の精神と達成後の「宴の後」現象。これはすごい作品です。
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 人間性への希望と虚無感と, 2007/1/29
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レビュー対象商品: おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1) (文庫)
天明2年(1782年)12月、伊勢の白子の浦を江戸へ向かって出た貨物船神昌丸は、嵐にあって漂流し、八ヶ月に渡って海上を漂ったのち、アリューシャン列島に漂着した。船長大黒屋光太夫以下16名の船員たちは、日本に戻るべく必死の努力を重ねるが、年月は過ぎ、ロシアの厳しい冬に一人ひとりと倒れていく・・・。数奇な運命をたどった日本人の実話に基づく冒険譚。

人の感情は根っこの部分で共通すればこそ、女帝エカチェリーナが光太夫の数奇な運命を聞き「ベドニャシカ(可哀相なこと)」と言い、読者もまた光太夫に共感できるのではないでしょうか? 100%善意から出たのではないにしても、漂流民の身柄を守り、日本に送り還す労を取るロシアの人びとの暖かさは、太古から脈々と人間性、というものが生きつづけてきた証しではないか、そんな希望を持ちました。

一方で、帰国する、という目標に彼らを駆りたてたものは何だったのか? 残ったものと、帰ったものと、それぞれの人生の意味は何だったのだろう、と生の虚無感にとらわれます。結局、与えられた条件の中で、最大限自分のやりたいように生を組み立てる、それ以上でもそれ以下でもないのではないか、そんなことを考えさせられました。

惜しむらくは当時の日本のシステムや人びとの生活に現代的な視点から疑義をはさんでいること。西欧中心主義の影が見え隠れします。江戸の人も与えられた条件をもとに考えて結論を導き出しているのにすぎないわけで、そのプロセスはロシアの人と変わるところはない。当時の彼らのプライオリティは何だったのか。幕府の考えかた、やりかたをそうした面から評価せずに、一方的に批判するにとどまっているのがやや残念でした。

人がいなければ歴史は存在しない、そんな当たり前のことを再認識させてくれる本。堅苦しいことを抜きにしても、単なる冒険譚として非常に面白いです。
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21 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0  これが作家の真骨頂, 2002/10/1
レビュー対象商品: おろしや国酔夢譚 (文春文庫 い 2-1) (文庫)
光太夫自身が書き綴った『北槎聞略』と読み比べてみてください。
この小説が,光太夫の記録そのものから,人物について,風景について,
イメージを膨らませていったものであることがよく分かります。
そして,それこそが作家の仕事なんだなあ,としみじみ感心しました。

『北槎聞略』は,光太夫が過酷な状況に臨んで発揮した特異な判断力と記憶力とで成り立った記録ですが,
それが刺激となって,作家は豊かにイメージを膨らませ,一つの物語にまでまとめてくれました。

そっけないぶんリアリティのある『北槎聞略』と,
物語として洗練された『おろしや国酔夢譚』と,
両方を読み比べることのできるこの贅沢。

光太夫も井上靖もありがとう。

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