とにかく驚いた。江戸のイメージが変わった。
江戸は政治史と文化・芸術史、それから落語にあるように、町人の暮らしの側面からイメージされることが多い。ところが、本書は完全に商人史、経済史から江戸をとらえている。その目線で見る江戸は、実に人間くさく、ダイナミックなのだ。
人口わずか数千だった江戸のまちは家康の入府とともにだんだんと都市の機能を備えていく。そのインフラを整備したのも商人たちの力に寄るところが大きかったという。しかも、彼らは幕府の援助もなく自力で国家的事業を興し、後でガッツリ稼いでいる。そういう才覚があったし、夢もあった。とてつもなくかっこいい男たちがこの本にたくさん描かれている。士農工商って、いったい何だったんだ! 武士とは違ったかっこよさがある。
そして、経営者として気になる組織生き残りの戦略や経営哲学が家訓などとともにちりばめられている。それがけっこういまに通じるから、驚きである。この本のオビに、「ドラッカー経営学の基本を江戸の豪商たちはすでに実践していた」と書いてあって、最初、「ドラッカーブームにあやかっているな」と思ったが、外人の理論をありがたく学ぶ前に日本の先達たちの経営学(経営学と言っていいと思う)を知るべきだと思った。じつは「おもしろ義塾1」を通してこの著者を知ったが、学者ではないのに、史料にもとづいてよくこういう本を世に送り出してくれたと感謝したい。