近年はオーディション新人大抜擢をやめて、大手所属の実績女優さんのオファーキャスティングにしたり、放送時刻も15分繰り上げたりと、些か迎合と迷走が目立つNHK朝ドラですが、どっこい継続は力なり。半世紀近く、日本の家族の朝、女性の朝に向き合い続けてきた年輪が、“朝らしさのカッタマリ”とも言うべきM-1『メインテーマ タイトルバック』の奇蹟の50秒に結実しました。
一分の隙もない、完璧な朝らしさ。せわしなく叩き起こすことなく、甘々の猫撫で声でもなく、醒めかけの夢と、現実とのあわいを行きつ戻りつさせながら、徐々に音の厚みが増し、トーンも緩やかに上昇していく。そっとカーテンを開け、窓を開け、光と空気のそよぎを送り込んで、どんなに多忙なとき、心寒々しい時でも、今日1日の始まりを祝福したい気持ちにさせてくれる旋律。
もうね、このテーマを聴いてさわやかに目覚められない人は、さわやかに目覚めることそのものを、一生あきらめたほうがいいくらい。小さくとも高純度の“朝焼け色”の宝石のようなこの楽曲を、アットホーム→元気一杯!→ノスタルジック…と三段活用したM-2〜M-4で、完全にヤラレます。
その後も、M-5〜M-7の言わば“ウキウキ青春篇”にはお澄ましユーモラスなM-8『メインテーマ はずむ気持ち』が添い、M-9〜M-14“悲喜こもごも成長篇”の後には風景画のようなM-15『同 美しき安曇野』で心洗われる、曲順編成もお見事。
全体のカラーがいい意味で統一されていてお行儀がいいので、劇中飛び込んでくる、ちょっと異色な曲をもっと入れてほしかったなという気もしないでもありませんが、劇中の陽子ちゃん同様、幼時の夢をかなえて、リタイアして、人生これからが色々に染め返す面白さ。第2集も期待しましょう。
最後に、NHK朝ドラのCDはどうもジャケの中身が愛想無しなものが多かった気がするのですが、今作は制作統括の小松さん、脚本の岡田惠和さん、音楽の渡辺俊幸さんのノーツがそれぞれに誠意に満ちていて嬉しかった。特にM-30“歌詞つきメインテーマ”の作詞を予期せず担当されたという岡田さんの話は興味深いものでした。