『アッホ夫婦』に続く柳瀬さんの新訳第四弾です。バーカートの幻想的な挿絵もいいですが、本書のブレイクの挿絵もなかなかよいと思います。ムカデだのミミズだのふだん気味悪がられている虫たちが登場虫物になっていますから、ブレイクの軽妙な絵のほうが面白いのかも知れませんね。
田村隆一さんの訳『おばけ桃の冒険』では主人公の名前はジェームス・ヘンリー・トロッターでしたが、新訳ではジェームズ・ヘンリー・トットコになっています。トットコ君、私はなかなか気に入りました。スポンジおばさんはガメッチおばさんに、スパイカーおばさんはトガリーおばさんになっています。その理由は、百足(ムカデ)君との空想対談の形をとっている訳者あとがきに記されていますが、充分納得のゆくものだと思いました。ガメッチおばさんはかなり傑作な命名ではないでしょうか。ほかに、ヤード・ポンド法表記はメートル法表記で翻訳されています。メートル法ないし尺貫法のほうが私たちの生活感覚に合うので、こちらの表記のほうがいいと思います。
訳者あとがきは、柳瀬さんらしく相変わらず翻訳に関する薀蓄の展開になってますが、本書では英米文化について触れているあたり楽しく読めると思います。『チョコレート工場の秘密』のあとがきにあるような「以前の翻訳」などという無礼な文言はありません。その点についての批判を考慮なさったのではなかろうかと推察します。
ロアルド・ダール・コレクションでは、以前田村隆一さんが訳したものがすべて柳瀬尚紀さんの新訳に切り替わるようです。訳の読み比べができるのはとっても楽しいものです。新訳・旧訳どちらがお好みですか? わたしはどちらも好きです。