読み返したときに気づいたのは、冒頭の「せんそう」という4文字だけが
他の文字より大きく、しかも色まで変えてあることだ。
そこには作者の強い意図が感じられる。この作品は第二次世界大戦で
ポーランドを追われた絵本作家:ユリ・シュルヴィッツの子ども時代の
エピソードがもとになっています。パンをまともに得ることさえ、
ままならない生活を強いられた彼の家族。ある日、彼の父親が市場から
帰ってきたときに手にしていたのが、食料ではなく一枚の世界地図でした!
もちろん家族の怒りは半端でありませんでしたが、そこには父の深い
意図があったのですね。一時のひもじさと引き換えに、シュルヴィッツは
大きなものを得るのです。
「せんそう」は何もかも奪い取ってしまう。しかし人には決して
失われることのない光があるのだと信じたくなりました。
当時の彼が便せんの裏に描き写したという巻末の地図の絵は、
今でもまぶしく輝いています。