ここまで作者を野放しにしてめちゃくちゃやった作品はそうないだろう。
相変わらず叶は天使だし、母親は死ぬべきクズだし、どのキャラもゲージを振り切って個性を出している。
ストーリーも単純明快で、ハイテンションで最後を駆け抜けた。
幸村叶は守崎コータにとって「おたくの娘さん」であるが、この先ずっと「オタクの娘さん」であり続ける。
王道ともいえる展開を目の当たりすると、わかっていてもニヤりとする仕掛けだと思う。
ただ最後のオチには思わずひっくり返ってしまった。コータはどんだけ百発百中なんだ。
この漫画、非常にアクが強い。だがハマる人には面白くてたまらない作品だと思う。
一見すると、オタクがヌルい子育てをして、オタク父は立場を自覚し子供と共に成長していく、
そんなストーリーが予想できるだろう。大筋はそんなところだ。
オタクネタも撒かれているので、元ネタがわかれば楽しめる展開も用意されている。
が、そんな平凡で終わらないのがこの作品の魅力であり恐ろしさ。
内容は割愛するが、思わず呆然となる展開が、具体的には第6巻で待ち受けている。
この巻のぶっ飛んだストーリー展開で、完全に主人公コータに共感する余地をなくしてしまうが、
いつの間にか嫌でも主人公に同情しつつ応援することになる。
主人公もまた、ぶっ飛んだ展開についていけず、読者の代わりに呆然自失となってくれるからだ。
つまり構図としては、6巻以前は「主人公に対する共感」によって読者を獲得してきたが、
6巻で「主人公への同情・応援」へとシフトさせる仕掛けをつけた。
この強引な仕掛けにうまく適合できればこの漫画にハマるし、脱落する恐れもある。
以降、作者の同人説法であったり、人によって鼻につく話もあると思うが、
「同情・応援」という視点でこの漫画を読み終えることが出来れば、
非常に爽快な読了感を得ることができる。
主人公コータは作者に振り回されてきたが、なんだかんだで成長しており、
最後はついに頼もしさすら覚え、思いのほか熱くなる展開だった。
漫画としては、作品通じて、おちゃらけ場面とシリアス場面でメリハリを利かせた描き方により、
読者は退屈しない。また、台詞回しも良く練られており、中身が頭に入りやすい。
これは作品をオタク向けと割り切らず、不特定多数の読者を想定したウェブ漫画出身のなせる業か。
一方、担当した編集にも頭が下がる。
これほど作者の悪ふざけややり過ぎな展開を採用して、よく11巻で収拾付けたと感心する。
漫画家、編集で作り上げた見事な作品だと思う。
最近の昼ドラ以上に血生臭い展開がストーリー中盤にしかけられ、
単純にオタク独男+小学生娘というヌルい漫画を期待していた人々は吐血したのではないだろうか。
そんな展開に屈せず、最終巻まで到達できた方とは運命共同体的意識が湧いてしまう。
本巻というより作品レビューになってしまったが、
作者が好き勝手にやって見事なオチをつけてくれた、稀にみる恵まれた作品に違いない。
願わくばほかのメディアでまたこの作品を見たいところだ。
お疲れ様でした。