2008年のリーマン・ショック時のサムスン電子の対応から本書は始まるがすごい。できたばかりの新本社をほっぽらかして水原の工場で世界中の市場情報をかき集め、すぐに生産に反映させる「超スピード経営」で赤字を四半期で脱出……とまさに疾風怒濤。「不況こそ他社を引き離す好機」と、半導体、携帯電話、テレビなどで爆走し続けている。サムスンCEOは、複雑な部品の組み合わせが信条だったアナログ技術と日本の相性は良かったが、ソフトが主力のデジタル時代には発想とスピードが命だ、と気づいたのだという。原発へのUAE販売は知られているが、フォーエバー21がアメリカの韓国系1世が始めたこと、フィラコリアがフィラの親会社になって、フィラを立て直したことなどを初めて知った。
学生時代は就職塾に通い、40歳で役員以外はみな退社という驚異の選抜、オーナーの大胆な決断力もあるが、著者は暗い一面も指摘している。大企業は10%という法人税、財閥グループの経営悪化企業を税金できれいにして財閥へ返すという産業政策、日本以上に激しい富の二極分化……また、今後は西武鉄道のように、オーナーの権力の源泉たる株式の継承問題も話題に上るだろう。
読みやすい文章で、今の韓国企業の特性がよくまとめられている。個人も組織も競争を厭わない韓国企業の強みが分かったが、CEOとオーナー以外はすべて負け組な感じのある韓国企業にはいられないし、いたくないかなとも思う。