障害者・住田を演じるのは、現実に重度障害者として暮らしている住田さん。
電動車椅子で生活し、自身では口が利けないのでボイスマシーンを使って会話します。
マヒと発達不全のため顔も含め全身が歪んでいるし、
ビールを飲めば口からこぼれるし、
まともな動作など一つも出来ない。
本作は障害者が殺人を犯していくというサスペンス・ホラーで、
障害者に対する偏見や差別を助長しかねない内容。
こんな作品に本物の重度障害者の方が出るということがまず衝撃。
しかし当の住田さんも
「決まり切ったお涙頂戴の障害者物語ならやりたくない。
障害者は美しくないし、ドロドロしている」
などと語っていて、この作品がいかに障害者の実像を浮かび上がらせようとこだわりを持たれた内容かがわかる。
とにかく不気味に撮られています。
白黒で、カメラワークもわざと不自然な角度や手法を織り交ぜ、またアップが多い。
不快で不可解で、それでいながらにして物凄い吸引力で画面に引き込まれる!
DVD再生する前までは眠かったのに、一気に眠気が吹き飛びました。
そしてもう、今夜はひょっとしたら眠れないんじゃないかと思うほど不気味な余韻が残っている。
住田の顔なんか、始まってものの二、三分で生涯忘れられないものとして記憶に焼きつきます…
そしてこの醜い住田の背景に流れるワールズ・エンドの末期的で儚く美しい音楽がまたね〜、住田の汚れ穢された純真を照らし出すようで痛々しい。
しかしながら、画面は不安を煽るようなドキュメントタッチなサスペンス調であるものの、
前半における障害者・住田と介護士である健常者が肩を並べて向き合っている姿は平穏そのもの。
ただ、やはり画面の不気味さが、その平穏の中にさえ歪を感じさせるかのようで、
むしろ絶対的な違い、隔たりが露になってくるようにも思えた。
まるで、おそらくは無意識の内におれの中にも根付いている障害者に対するキレイ事がそこにあるかのように。
不気味だとか同情とか罪悪感とか差別意識とか、色んな感情が出てきて、これが漠然と、しかし強烈に恐怖を臭わせてくる。
そして女子大生なんかがやってくれば、
当然一人の男として、健常者の男以上に障害者も激しく性を刺激されるわけで、
絶望的な恋と妄執的な希望の混在が一気にサスペンスな緊張感を高めていきます。
キレイ事抜きにはっきり言いましょう、
愛されるはずがない。
彼等はそもそも人間としてすら見られていない、かもしれない。
こんな禁忌な事実を画面から突きつけられるような、最悪な気分。
でも、論理的に説明出来ない住田の凶行の根源的な理由はおそらくそこにあって、
障害者として生まれた自分への絶望、世の中への妬み、他人への怨み、運命への怒りが住田から濃密にビンビン感じられます。
もちろん、女の子はあくまできっかけに過ぎず、「障害者である」ということが逃れられない奈落のような唯一の真実だということ。
その真実があるばかりに、実はこの物語のもっと以前から住田の中には鬼が棲んでいたのかもしれない。
もう言葉を失う、どう感想をもったらいいのかすらわからなくなる。
というか、もう処理出来ません!
おれの胃がドロドロしてどうにかなりそう!
ラストまでとにかくやりきれなくて、
いっそもう「これ以上、住田を見ないでやってくれ!」と全ての鑑賞者に言いたくなり、この映画を封印したくなる
とにかく本作が、問題作であり傑作であることは間違いないです。