ワインの産地、銘柄、ヴィンテージ、マナー…、うんちくが満載の「ワインの教科書」「ワインの辞典」という類の本はたくさんある。
でも、どれも使えない。高級ワインや手に入らない、飲めないワインの話をされてもつまらない。ざっくりすぎる情報もいらない。
手頃でおいしいワイン、いいメーカー(作り手)や今の傾向を、ワインを買うときに指標になる情報がほしい。
この本はそんなツボを押さえている。
掲載されている物がほしい、と思った場合も、好みはあれど100本とくればきっとどれかはハマるだろう。
最近は旨安ワインを紹介してくれる本や雑誌が増え、ネットにもさまざまなレビューがあって参考になるが、この本が突出しているのは情報量だけではない。
ワイン選びがもっと楽しくなる巧みな誘い文句がいたるところに散りばめられている。
安心できる価格なのはもちろん、味の特徴も詳細に説明されている、どんなシーンで、何を合わせるとおいしいのか、想像力が膨らむ。かつ、せっかく選んだワイン、良質なものであるということに納得して心おきなく酔いたい、そんな心理までを突いてか、ワインの出自もしっかりと述べられている。
簡潔で明快、それでいて作り手の情熱やストーリーをさりげなく滑り込ませる語り口が心地良い。
細かい事はどうでもいいからとにかくワインを楽しみたいと思っている人には有名な格付けより説得力をもつ。
産地への偏見がないのもとてもいい。
ワインと作り手への愛と敬意、喜びにあふれた、読み物としても楽しめる充実の一冊。