天才は孤独なのか、孤独だから天才になるのか。
「天賦の才能」を育ててしまった人間の、愛すべき人間性を描いた作品。
「芥川龍之介」で街頭インタビューして出てくる言葉といったら、
恐らく作品名と、「小説家」「女」「自殺」あたりではないだろうか。
教科書に載ったつまらないプロフィールと、抜粋で切り刻まれた作品の一片。
そこから興味を持って本一冊を読み通す人が、何%いるだろう。
この作品に居るのは、そういう芥川ではない。
血の通った、人間臭い、あまりにもピュアで単純で、同時に複雑な男。
つまり「凡人」と言ってもいい独りの男だと思う。
作者は20年程前からこれを描きたかったそうで、出版社に断られ続けてきたという。
私の基準で計らせてもらえば、それらの出版社は馬鹿だ。センスない。
出版社や編集者が変わってガクッと面白くなくなる作家がいるが、
読者は誰かが考えた「売れそうな作品」ではなく、「見たことのない世界」が読みたいのだ。
作者の独特な感性が活かされた、何者にも制限されない、自由な作品が読みたいのだ。
史実と違う部分もあろうが、作者が描きたかったのは史実ではなく、
「己が捉えた芥川像」なのだろう。対象は見る者によって左右される。
誰かと全く同じ芥川像があるならば、それこそが教科書的だ。
感性を持つ者が感性を持つ者を描くという、私には素敵なフィクションだった。
★5つにしなかったのは、一巻読み切りでは勿体無いと感じた故である。