評者は文庫に入った著者のシリーズ(「ショージ君」および「丸かじり」)のほぼ全部を読みながらも、これまでは、もの言わぬ、控え目な読者にとどまっていた。だが、今回はちょっと違って、思わずレビューを書きたくなった。これまでのレベルをさらに突き抜けた何かを感じたからである。
例えば、そら豆の「おおらかさ」の描写(16頁)、デパ屋でご婦人方が好むクリームソーダの観察(28頁)、もなか=ヤドカリ説(46頁)、シャワーを浴びながらの白桃食い(64頁)、そして極めつけは、350ミリリットルではなく、500ミリリットル缶を呑む男の話(160頁)と、一見マンネリ、実はウルトラリアリズムとでも言うべき水準に入り込んでいる、著者の着眼と筆致の凄み、とでもいうべき迫力の体験ルポにいちいち感服させられた次第。著者は現時点で73歳、本編を単行本で上梓した時点で69歳。恐るべし。