「うつ病」という言葉自体はかなり巷に出回っているものの、その疾患概念については治療法・予後なども含め情報がやや錯綜してしまっているというのが現状なのではないでしょうか。
本書は、うつ病が増えている現状を疫学的に概観した後、所謂内因性うつ病をそのプロトタイプとして捉え、それについていくつもの症例を挙げるなどしてやや詳しく説明した上で、新型、非定型、未熟型、…なども「表現型」はやや異なるもやはりその亜種であるとする立場から議論を展開しており、この辺りは当然異論もあり得るところだと思いますが、病因論などによらず主に表面的な症状のあり方で診断する今日の精神医学の立場からはオーソドックスと言えると思います。
治療法についても、以前NHKで放映された番組の影響も指摘しつつ、薬物治療の適否に関してきちんとした見解が提示されており、その番組で紹介されたという認知(行動)療法について、その中身だけでなくそれがなぜ日本でそれほどメジャーにならないのかという点についても触れられていますし、他の治療法にも簡単ながら言及がなされています。
さらに、回復のブロセス、自殺の危険、予防法についてもそれぞれ章立てして論じられており、新書としては及第点はもらえると思うのですが、全体としてやや面白みに欠ける上、抗うつ薬の服用を予防法として考えるという意見には個人的には賛同しかねることもあり、★を一つ減点しました。