うつに関する情報が多くなり、新聞でも雑誌でもテレビでも特集が組まれる。
うつ病に関する認知度が高まって、ある面ではそれはいいことだと思う。
しかし、安易な解釈がまかり通っているのも事実だ。
本書は、うつ病の歴史から、文学にあらわれたうつ病などのエピソード、
現在の治療法、薬物……と、「うつ病」とはそもそも何なのかを探る。
野村先生は最近増えている「双極性うつ病」の権威でもある。
これは一種の「躁うつ病」で、「うつ病」と同じ治療をしても効かないばかりか悪化させることもある。
かなりむずかしいことも書かれているのだが、文章が実にわかりやすい。
スイスイと読めてしまう。
こんな先生にカウンセリングを受けたら、たいていのうつ病はかなり軽くなるのでは
という気にさえなる。
これまでの野村先生の本の中でもベスト1と言えるだろう。
キーワードは「安易」である。
治療者サイドで言えば、「ゆううつ」ということばが患者の話の中に少しでも入れば
「あなたはうつ病です!」と診断して抗うつ薬を渡す。それもSSRI。
患者サイドでは、「元気がない」「仕事がつらい」「うつみたいです」……とずるずる休み、
そして「真面目すぎるとうつになるだって……」と自分を納得させる。
あるいは対人関係がうまくいかず周りを傷つけて、時には自分もリストカット……。
「この苦しみは誰もわからない!」――と。
どれもこれもうつ病でいいのだろうか、と著者は言う。
その通りだと思う。
私たちは改めて「うつ病」というもの、現代社会の病理というものを
腰を据えて考え直すべきではないだろうか。
「うつを治す本」とは言えないかもしれないが、はぐらかされた感じも
難解さも感じない。むしろ元気になるのはなぜだろう。
それは、「うつの正体」が見えてくるからだと思う。
うつに苦しむ人間は、「うつの正体」がわからずに悩んでいる。
それを知っている人だから書けた本である。