小路さんのここ何作かは(『東京バンドワゴン』シリーズは別として)、私には
首を傾げたくなるものだったが、この『うたうひと』はよかった。
雑誌やムックに連載したものをまとめた短篇集だが、書き継ぐほどに
興が乗ったという感じで、ぐいぐい読まされた私。
音楽に携わる人の哀歓を描いて、それが誰しもの人の心のなかに在るであろう
優しさや信じあう気持ちを語るものとなっている。
ギターやピアノやバンドの楽しさ、すばらしさを描きながら、またそこから
なにがあっても離れては生きていけない人たちの業のようなものも
垣間見られる。そこが、人間臭くていいのだ。
「笑うライオン」でほろりとさせられ、「その夜に歌う」でじんとさせられ、
ラストの一篇は何度かTV番組でも取り上げられて、広く知られたことを
ネタにはしているが、胸張って「おれはミュージシャンだ」という熱い思いに
打たれた。