これは・・・、昭和初期の日本史をちゃんと勉強した人にとっては当たり前のことかもしれませんが、とてもわかりやすく「いわゆるA級戦犯」と呼ばれた人たちのことを紹介し、当時の国際法で戦争犯罪人として裁かれるべき日本の政治家や軍人は誰一人いない!ということを書いています。
多くの人が入門書として薦めていますが、ぜひ読んでもらいたい一冊だと思います。
参考文献もたくさん紹介され、より正確な事実を調べてみたい方はそれらを参照するのが良いと思います。
主張の要点や主要トピックと感想を書いてみました。
1.東京裁判はマッカーサーが定めたチャーター、いわゆる事後法で戦争犯罪を勝手に規定したものに基づいて開催された。
事後法で裁くことなどできない。つまり、戦勝国によるリンチのようなものである。
2.人道的・道義的な問題はあるにせよ、戦争そのものは犯罪とされていない。それを犯罪とする法が存在しないから。ただし、WW'Tの反省から、「戦時国際法」で「交戦法規」が定められた。そこでは、戦闘に無関係な民間人の殺戮、不必要な苦痛を与える残虐兵器の使用、軍事目標以外の攻撃などを禁じている。これに基づけば、戦勝国のアメリカによる原爆投下はあきらかに「交戦法規」に違反していることが明確だといえるが、実際に裁かれたのは敗戦国のみ。
当時、戦犯とされた日本人たちが裁かれる法的根拠はない。
3.ヒトラーのような独裁者のイメージを持っている人も多い(と思う)東条英機内閣は、そもそも天皇の意思を受けて戦争を防ぐために組閣された内閣であり、本人も積極的に総理大臣になろうとする意思も野望もなかった。
4.戦犯とされた政治家の多くも戦争を防ぐための努力や交渉を必死で続けていた。ただ、アメリカからは全面降伏を迫るに等しいハルノートを日本は突きつけられたため、開戦を避けることは非常に困難だった。
(おそらく、誰が内閣を担当していたとしても。。)
5.当時の国際法に従い、事実関係に基づく判決文を提示したのはインドのラダ・ビノード・パールという判事。
彼は法的根拠に基づかないこの裁判の前提を疑い、裁かれる理由のない政治家たちを全員無罪とした。
※ これは小林よしのり氏の解釈であるが、パール判事は欧米列強に武力対抗した日本を肯定していたかのような表現がある。しかし、実際にはパール判事は欧米諸国の帝国主義を真似た日本やバターン行進などの日本の所業をすべて肯定していたわけではなく、あくまで、第二次世界大戦前の世界にはそういった「過ち」を法で裁くことはできないとしていたにすぎない。パール判事が無抵抗運動で独立を勝ち取ったガンジーを尊敬していたという点からも、この解釈は裏付けられると思うが、本書からはパール判事が日本の侵略行為(と書くと語弊があるが)を全て肯定的に捕らえているかのような伝え方が感じられる。トーンの問題かと思うが、パール判事の態度を正確に伝えるのであれば、この点にもしっかり触れるべきであろう。
(*ガンジーへの尊敬の念は息子も証言しているし、「パール判事の日本無罪論」(田中正明著)の第一部にもそれに関係する記述が見られる。)
所感:
事実関係を正しく検証することの重要さを改めて感じると同時に、そういう歴史教育をしていないことのおかしさに憤りを覚えます。
(本当のことをいえば、本書すら鵜呑みせずにパール判事が調べたような資料を分析・理解するのが理想なのでしょうが。。)
著者の情報ソースが史実に忠実なものだということを信じて考えると、純粋に和平のことを考えて行動していた人が、冤罪で死刑にされたということがとても悲しいことに思えました。
その多くは、戦争を止められなかったことの政治的立場上の責任を感じていたために潔く死刑判決を受け入れたということですが、それが余計に残念ですね。