3つの短編集です。表題作「いやしい鳥」は、ある非常勤大学講師が、飲みの席で初めて会った学生を家に連れ帰らなくてはならなくなった事に端を発する事件を、その非常勤大学講師の目線と、隣りの専業主婦の目線とを交互にしながら、なお時系列を少しずらす事でさらに面白く読める短編です。事件とちょっとした現実が遠ざかる瞬間のまどろむ感覚の表現は上手いと思いました。中でも「スーパーナチュラル」なものとリアルさとの混合比といいますか、混ざり具合がちょっとしたSFやホラーなんかとも違った感覚を持っていて、私としてはこの「いやしい鳥」と「胡蝶蘭」が上手くいっていると思います。最も短い短編「胡蝶蘭」もきり方といい、題材といい、リアルであってリアルじゃない、という不思議な世界観を出してくれていて、自由度も高く、面白い作家さんだと思いました。
ただ、チカラ強さといいますか、狙いとして最も新しいと感じたのは「溶けない」というもうひとつの短編で、この読みやすくそして物語の切り方でなく短編でやる物語の着地点としてはかなり特異な感じで新たな作品が出たら読んでみたくさせました。
新しい物語が気になる方に、短編小説の上手さではなく可能性が気になる方に(決して完成度が低いわけではありませんが)、オススメ致します。