「会計知識がなくても有価証券報告書の定性的な情報から投資のヒントが得られる」、という趣旨の本である。
基本的に「株式投資」が前提で、たとえば企業の財務基盤の安定性の分析等には言及が少ない点に注意が必要だろう。
また、後述のように株式投資の常識と食い違った記述や、一部情報の陳腐化などがみられ、あまりオススメできない内容だった。
「投資に有用となる定性情報が有価証券報告書に詰まっている。有用に活用すべきだ」
というメッセージには大いに共感するが、いかんせん本の内容に関しては付加価値が少ないという印象だった。
「有価証券報告書にどんな項目の記載があるかなんとなくわかっている人」に対しては、ほぼ付加価値がないと思われる。
「有価証券報告書に何が書いてあるのか見当もつかない」、という読者層には、有価証券報告書の記載項目が列挙されており、簡潔にポイントが挙げられているので有用かもしれない。
しかしながら、
(1)一部株式投資の常識とはズレた記載がみられることや、
(2)会計処理の解説に陳腐化がみられるため、
あまり薦められる本ではない。
まず(1)ついてだが、たとえばp68の「株価の推移」を読むポイントとして、
「同業種の中で比べて特に株価が堅調な推移な会社はオススメ」、といった記載があるが、
これはある意味その会社の株価が割高である可能性もはらんでおり、一概にそうではない。
また、p76「貸借対照表」を読むポイントとして「できれば無借金経営が望ましい」という記述があるが、これは株式投資の観点では誤りである。
(2)については、たとえばp116「連結貸借対照表を読むポイント」でいわゆる「負ののれん」についての記述があり、負債に計上されている場合は企業の収益性が低い可能性、という解説がある。
少なくとも現時点の会計基準では、そもそも「負ののれん」が貸借対照表に計上されることはなく、すべて特別損益で処理されるため、この記述はミスリーディングである。
これは本書が執筆されたのが、2005年6月と古いためと推察される。こういった情報の陳腐化にも留意する必要がある。
コンセプトはいいのだが、内容が今一つという結論で☆2つ。