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いまこそハイエクに学べ: 〈戦略〉としての思想史
 
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いまこそハイエクに学べ: 〈戦略〉としての思想史 [単行本]

仲正 昌樹
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

入門本を書かせたら右に出る者はいないナカマサ教授が、ハイエク独特の思想史の分類を辿ることによって、白にも黒にも収まりの悪いハイエクの思想を、分かりやすく紹介する。

出版社からのコメント

本書は、20世紀を代表する経済学者・思想家である、フリードリヒ・ハイエクの思想を、入門書で定評のある金沢大学の仲正昌樹先生が、エッセンスを凝縮させてまとめたあげたものとなっております。
本書の特徴としましては、ハイエク自身というよりは、ハイエク的思考とはどういったものかという点に焦点を当てた点にあります。
ハイエク的思考を一言で申しあげますと、「社会というものは、ごく一部の知識人や技術者による設計ではなく、目的を共有しないさまざまな個人の行為によって自生的に形成されてくる「制度」によって発展していく」、という点にあります。
こうしたネットワーク型思考は、市場はもちろん、インターネットの原理などと重なるもので、近年大変な注目を浴びています。ハイエクはこうしたものを「自生的秩序」と呼びますが、この言葉は、近代の官僚的なピラミッド型思考に代わるものとして、様々なところでとりあげられるようになっています。
政治、経済、メディアから、エネルギー問題に代表されるインフラ、さらには会社組織まで、中央集権的に成りたっていた制度・システムが疲弊し壊れつつある今、ハイエク的思考は分散型のネットワーク社会の基礎となるものであり、今後ますます重要になってゆくと思われます。

登録情報

  • 単行本: 280ページ
  • 出版社: 春秋社 (2011/8/26)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 439361111X
  • ISBN-13: 978-4393611111
  • 発売日: 2011/8/26
  • 商品の寸法: 19.7 x 13.7 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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By koji
ハイエクは、「リバタリアン」の元祖と呼ばれる人物である。「正義論」を構想したロールズ、NHK教育で放送され、評判となった、サンデルなどの「リベラル」と対立する位置にいる、とされている。
しかし、著者は、この本で、ハイエク対ロールズという対立する構図、また、世に流布されたその「自由主義思想」に関する「常識」を打ち破っている。
ただ、著者も言うように、ハイエクは、分かりづらい。
著者によると、ハイエクの分かりづらさは、かなりユニークな思考法、文体にあることであり、古代ギリシア語を利用した独特な造語法、また、既成の自由主義思想を要約・批判している部分と、ハイエクのオリジナルな主張の境目が見極めにくいところがあり、その思想の「まとまった像」が描きにくいことなどにある、という。
しかし、ハイエクの最大の魅力は、独特のターム(語彙)によって「自由主義の思想史」をラディカルに読み替えていくところであり、また、共通理解が成立していそうな「法」、「市場」、「民主主義」、「正義」などの言葉の意味の古い層を文献学的に掘り起こし、そうした古層と、経済・政治・法をめぐる現代の哲学的論議のズレを浮き彫りにしながら自らの立ち位置を明らかにしていくハイエクのやり方は、ドイツ的な「解釈学(Hermeneutik)」の伝統を継承している、という。
このハイエクという英米系の政治哲学のメインストリームの中で異質な存在として位置づけられる人物を、「(戦略的)思想史家としてのハイエク」として把握している。
「戦略的思想史家としてのハイエク」について、次のように評する。
「すぐれた思想史家は、独自の問題意識、方法論で、自分が関心を持っている領域の概念や言説の歴史を再構成し、かなり手あかがついている平凡で慣れ親しんだ言葉に、新しい意味を与え、新しい議論の地平を開く。」と。
そして、著者は、ハイエクの戦略的思想史をテーマ領域別に、'@設計主義批判、'A自由主義の2つの系譜、'B「ルール」概念を介しての進化論と伝統重視の融合、'C「法」と「正義」の本来の意味の探究の4つについて議論を進めている。
これらの議論をここで紹介する力量は、筆者にはないので、内容の詳細は本書に譲ることとしたい。
最後に、これらの議論を通して、ハイエクの思想の特徴を、「様々なレベルの二項対立から微妙に外れていく思考様式」と位置付け、ハイエクの思想の現代的意義を、'@「格差社会」への対応、'A民主主義へのアプローチ、'Bインターネットとハイエクの知識論を取り上げて、検討を行っている。
この本を読んだ筆者の第一の印象は、著者が言うように、繰り返しになるが、ハイエクという人物の分かりづらさである。とにかく、その思想の範囲の幅広さに、驚愕してしまう。従って、ここでも、うまく内容をまとめて、伝えることは無理である。
それととともに、初めに書いたように、「リバタリアンの元祖」として流布しているハイエクが、この本を読むまでは、あまり近寄りづらいような印象であったが、読了後は、そのような印象が不思議と払拭されてしまっている。
それは、ハイエクがコミットした「個人主義」が、デカルト的な、理性的故人を想定する「個人主義」ではなく、
「コスモスの中で生きる、あまり強くない、個人」を想定する「個人主義」である、知ったからである。
そして、著者は、最後に言う。
「ハイエクのあまり元気にしてくれない自由論は、その裏返しとして、”必ずしも強くない個人”たちが、協同で「大きな社会」を作り、(それなりに)自由に生きることがどうして可能なのか再考するきっかけを与えてくれる。」という。
この本を読んで、筆者は、ハイエクの広範な思想の内容を知ることが出来、また、敵対すると考えられている、ロールズの思想に、ハイエクが好意を寄せていたことを知り得、とても意義深い読書体験を得ることが出来たと思う。
著者と版元の春秋社に率直に御礼を述べたい気分である。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ポスト・モダンの左旋回」もそうですが、著者はあえて保守派、あるいは右よりな題名をつけて、そういった傾向を持つ読者を啓蒙しつつ、中道に引き戻すという戦略をとっているようです。
 題名だけを見ると、通俗的なビジネス書と思われそうですが、中身はバリバリの思想研究の本。ハイエクの経済理論にはあまり触れず、彼のイデオロギー批判や法学思想に焦点をあてて、著作を広く深く読み込み、ニュートラルな見方から、思想史的な位置づけを行っています。
 
 ポイントをいくつか挙げると、
1.設計主義批判
 ハイエクは人間理性の有限性を根拠に、社会を政治権力によって人為的に改造し調整することを批判しました。その立場から、彼はファシズム、社会主義、および社会民主主義的福祉国家を攻撃した。
2.自生的制度
 社会制度は、社会を構成する個人の意見の積みかさねによって「自生的」につくられることがベストであるとする。ハイエクは、「自分は保守主義者ではない」といいました。保守主義者は一定の制度を墨守するもの。一方自生的制度は、完成を知らず、時代の条件にあわせて、つねに変化し、移ろっていくもの。
3.法と社会正義
 しかし、自生性だけでは権力の暴走を食い止めることはできない。ナチス・ドイツはワイマール共和国の民主的な意思決定のプロセスの中から生まれてきたのである。ハイエクは実定法や、それを制定する立法意志を絶対とすることはありません。その点では、形式的な法治主義や正義論を唱えるリバタリアンとは一線を画している。

 本書から見えてくるハイエク像は、新自由主義のイデオローグというよりは、自由主義右派の法思想家といったところ。リベラルが事実上社会民主主義になってしまったアメリカの政治的文脈で、福祉国家に派生する官僚主義を批判し、自由主義に本来のダイナミズムを取りもどそうとしていたゆえに、彼の著作にはことさらに左派を攻撃する言説が増えたというのが実情なのかもしれません。
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13 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By どぜう トップ1000レビュアー
ハイエクという人物については、その名前と『隷属への道』という著作があること以外、西部邁氏に関連した話でその名が取り上げられていた(著者が本書の冒頭でも触れています)という記憶程度しか持ち合わせていなかったこともあり、多少なりともその思想の一端に触れてみたいと思い本書を手にしてみました。

サブタイトルと関連すると思いますが、著者によれば、ハイエクの思想は単純な体系化や分類には馴染まないそうで、寧ろ自らの「自由」観の明確化・正当化を思想史・解釈学的なスタンスから意識的・戦略的に行おうとしてきた人、と捉えた方が相応しいらしく、本書もそういう観点から叙述がなされています。

具体的には、ハイエクの著作を参照しつつ、章毎に概ね、

1.設計主義・集産主義の傲慢さへの批判:英国的自由主義vsドイツ的集産主義〜社会主義。

2.真の個人主義(古代アテネの「イソノミア=法の前での平等」を源とする初期古典派経済学に由来し、自生的協力をを通しての制度形成を信頼)vs偽りの個人主義(デカルト的合理主義に由来し、普遍的理性に信頼を置きつつ契約に基づいて「社会」をゼロから設計・再構築できると考える)。

3.マンデヴィル〜ヒュームの「ルール進化」論(効用の予見できない文化的進化の過程で、一般的ルールは生まれてくる)と、そのルールの進化と連動して「理性」も進化するという立場を取る「進化論的合理主義」の提唱〜小さな社会の「エコノミー」から大きな社会の「カタラクシー」へ。

4.コスモス」(=自生秩序)に対応する英国コモン・ロー的「ノモス=自由の法」と、「タクシス」(=組織)に対応する「テシス=立法の法」という法概念の区分。前者と相関を有し、進化によって形成されてきた「正しい振る舞いのルール」に基づくハイエクの消極的正義観と、それと対立する後者に源流を持つ法実証主義の積極的正義、社会的正義。さらにはロールズの正義論との関係。

そして、最終章で現代思想と絡めてのまとめ、という展開になっています。

評者のレベルが低いという事情もあり、著者の描くハイエク像の正否についてはコメントできませんが、本書により評者の近代西洋思想史に関する蒙昧が一定啓かれ、見晴らしのよい展望が得られたのは確かな気がするため、★5つと致します。
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