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ポスト・モダンの左旋回」もそうですが、著者はあえて保守派、あるいは右よりな題名をつけて、そういった傾向を持つ読者を啓蒙しつつ、中道に引き戻すという戦略をとっているようです。
題名だけを見ると、通俗的なビジネス書と思われそうですが、中身はバリバリの思想研究の本。ハイエクの経済理論にはあまり触れず、彼のイデオロギー批判や法学思想に焦点をあてて、著作を広く深く読み込み、ニュートラルな見方から、思想史的な位置づけを行っています。
ポイントをいくつか挙げると、
1.設計主義批判
ハイエクは人間理性の有限性を根拠に、社会を政治権力によって人為的に改造し調整することを批判しました。その立場から、彼はファシズム、社会主義、および社会民主主義的福祉国家を攻撃した。
2.自生的制度
社会制度は、社会を構成する個人の意見の積みかさねによって「自生的」につくられることがベストであるとする。ハイエクは、「自分は保守主義者ではない」といいました。保守主義者は一定の制度を墨守するもの。一方自生的制度は、完成を知らず、時代の条件にあわせて、つねに変化し、移ろっていくもの。
3.法と社会正義
しかし、自生性だけでは権力の暴走を食い止めることはできない。ナチス・ドイツはワイマール共和国の民主的な意思決定のプロセスの中から生まれてきたのである。ハイエクは実定法や、それを制定する立法意志を絶対とすることはありません。その点では、形式的な法治主義や正義論を唱えるリバタリアンとは一線を画している。
本書から見えてくるハイエク像は、新自由主義のイデオローグというよりは、自由主義右派の法思想家といったところ。リベラルが事実上社会民主主義になってしまったアメリカの政治的文脈で、福祉国家に派生する官僚主義を批判し、自由主義に本来のダイナミズムを取りもどそうとしていたゆえに、彼の著作にはことさらに左派を攻撃する言説が増えたというのが実情なのかもしれません。