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いま、働くということ
 
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いま、働くということ [単行本]

橘木 俊詔
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

人はなぜ働くのか、どのように働けばいいのか。人類の歴史は「働くということ」に向き合ってきた歴史であり、古今東西の数多の偉人たちが人間と労働の関係について考えを巡らせてきた。本書では、働くことの意味、余暇とは何か、女性の労働、働かないことなど、様々な側面から「働くということ」に切り込み、ますます多様化する現代社会が直面している諸課題を展望するための足掛かりとする。

著者について

同志社大学経済学部教授

登録情報

  • 単行本: 204ページ
  • 出版社: ミネルヴァ書房 (2011/9/1)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4623061094
  • ISBN-13: 978-4623061099
  • 発売日: 2011/9/1
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.6 x 0.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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著者は日本経済学会会長まで勤めた人だから、斯界の権威ということになるのだろうが、そういったことから連想される硬直性は微塵も感じさせず、柔軟な態度で広い視野から現代における働くことの意味について考察しており、色々と考えさせられる本である。

この国では、世間の圧力により、皆が働くことに喜びを見出すこと、そう装うこと、あるいはそのように自分自身をだますこと、を強制されているのではないか、と思うことがある。世界に冠たる日本のサービス水準の高さや労働力の質の高さを保たせているのは、そういった社会通念=「空気」の圧力による面も多分にあり、日本人がそれによって払っている犠牲もまた大きいのではなかろうか。

海外に行くと、やる気のなさを丸出しにして、まるで良心の呵責も他人の視線をはばかることもなさげに堂々と中途半端な仕事をしている人をよく見かける。その潔さにはまったく感服し、しばらく惚れ惚れと見とれてしまうこともあるほどだ。

私が中国に留学していた頃もそういう人々によく出会った。お釣りを投げてよこすレジ係、常に苦虫を噛みつぶしたような顔をして額には青筋が浮かび上がった駅の窓口係、店に入ってきた客をいまいましそうに睨み付ける書店員(思い浮かぶのが皆女性なのはどうしたことだろう)。あれから10年、彼の地も当時とは変わったかもしれないが(本質的には変わらないだろうと思うが)、名も知らぬ彼女らの姿は私の思い出の中で生き続けている。

もちろんそういうのは極端な例で、社会の大勢をこのような人たちが占めてしまうとやはり不愉快なことも多かろうが、こういう人たちを見ていると、この国には日本のような「空気」の締め付けがないのだろうなあと羨ましく思ってしまうことも事実である。

著者はこの本で、「働くことに意味はない、人はそんなに働かなくてもよい、あるいは働くことが生きることに必ずしもつながることない、という考え方に興味がある」、「人々にとっては本当は「働くことは苦しい」「働くことはイヤだ」「働くことに意味はない」と思っているのが多数派ではないかと思う」と述べ、労働に生き甲斐を見いだせない人は働く場所や機会を奪われることがない程度の努力でかまわない、と説いているが、まったく同感である。労働が個々人が社会とつながる回路であり、個々人を成長させることがあるのも確かであるが、労働に対する精神的態度まで真綿で締めつけるような「空気」の圧力で強制されることがあれば、それは明らかに個々人を抑圧する悪しき桎梏であると言えるのではないか。「お客様に幸せを与える」「職場は人間を成長させる場」などという精神主義を掲げる会社に限って、サービス残業が蔓延したり、異様なまでの同調圧力でそれに少しでも乗れない労働者を排除したりしがちなのである。

古代ギリシアの労働観やB・ラッセルの『怠惰への賛歌』を持ち出すまでもなく、決して少なくない人々によって、労働は「必要悪」だと感じられているのだとすれば、著者のような考えが、表面的な笑顔の裏に怨念が渦巻くかのような日本の労働を取り巻く閉塞した「空気」に風穴を開け、日本の労働観が徐々に風通しのよいものに変わっていくことを願ってやまない。
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