著者の望月智行博士は川越胃腸病院院長として、医療は究極のサービス業
という医療哲学に基づき、先進的な病院経営をおこなってきました。
病院は単に先端技術を駆使して病気を治すことにつとめているだけでは
不十分であり、人の「温かな心」と「言葉」に支えられて営まれるホスピタリティに
溢れたものでなければならないというのです。本書では、その具体的な実践の
歴史と現在が病院職員、患者双方の視点を入れながら綴られています。
医療であれ、経営であれすべて基本は人であることが示されています。
機械やシステムはそれだけでは動かず、性能を全部引き出しても10なら
10の働きしかしません。しかし、人は違います。人の駆動力はモチベーション
であり、それがあがれば通常の2倍、3倍の働きができ、そうした人びとが
集えば、10倍、20倍の能力発揮も夢ではありません。
著者が究極のサービス業の基盤に据えたのは病院職員でした。それも医師や
看護師といった医療スタッフだけでなく、それ以上に清掃職員、事務職員、
さらにはパートや派遣の職員まで、すべて病院を支える欠かせない宝として、
育てていったのです。
組織の基盤は人づくり、人を育てることであり、その底流にあるのは「愛情を
もって相手を見つめ続けること」だといいます。これは病院だけでなく、
あらゆる企業、教育機関、それどころか、親子や夫婦の関係にさえあてはまる
人間関係の基本中の基本だといえます。
本書は病院経営で難題に直面している経営者にはもちろん参考になりますが、
それだけでなく、あらゆる組織で人を育てている人に多くの示唆を与えてくれる
と思います。