このバラード曲で竹内まりや氏は作曲していないので彼女の作詞について書く。この歌詞は前向きな彼女らしさの一つの到達点だと思う。生きることはつらいことばかりではない。良き出会いもある。支えてくれることもある。尊い日常がある。そして、「この命にありがとう」。
彼女がこの作詞をしたとき、珍しく泣いたという。不思議と。どんなに悲しい曲を書いても泣かなかったのに、との事。これは生みの苦しみなのか、喜びなのか。いずれにせよこの詞に彼女の体が反応したということは、彼女にとって節目の曲なのかもしれない。
「元気を出して」、「Quiet Life」、「人生の扉」、そしてこの「いのちの歌」。この一連の作品群にあるもの、それは生きることの肯定。彼女の夫であり、ビジネス・パートナーであり、何より彼女を一番知っている、山下達郎氏は、彼女をこう捉えている。「ひとが生きて行くことへの強い肯定」。ベスト盤『Expressions』のライナーノートで彼はそう書いている。この作品もその流れを汲んでいる。これは時代を経ても残り続ける曲。そう願ってやまない。
追記
初回盤のみに収録されているボーナス・トラック「いのちの歌 (ピアノ&ボーカル・バージョン)」は、ピアノと彼女のボーカルのみのシンプルな演奏。このシングルの中ではベストテイクではないだろうか。優れた曲は、シンプルな演奏と歌が聞き手の心に良く響く。