1962年大晦日に大雪山系で起きた大量遭難事故のあらましと、ただ一人の生還者であるリーダー、野呂幸司氏のその後を書いた本です。
大学生ばかり11人のパーティーのうち10名が亡くなる遭難事故の描写は、壮絶としか形容できません。
たったひとり生還した野呂氏も、両足先を切断することとなりますが、彼はやがて亡くなった仲間の分まで立ち上がり、事業家として成功し、さらには障害者オリンピックで栄冠を手にすることになります。
野呂氏が常人には計り知れない努力をされたことは間違いありませんし、そのバイタリティは素晴らしいと思います。
しかし私は、本書をどうにも素直に受け取れないのです。
それはつまり、本書がたった一人の生き残りである野呂氏のヒーロー譚になってしまっていて、10名もの命が失われたという事実が、いかんせん軽く扱われているように感じてならないからだと思います。
吹雪の山中で起こったことは、生還者の言葉でしか語られません。
強いカリスマ性を持ったリーダーである野呂氏が育て上げた山岳部。
その山岳部初の長期冬山行で、そのリーダーのみが生還したという事実。
彼が語る言葉を主体に構成された本書が、果たしてどれほど客観的かという疑問が、読みながら頭を離れませんでした。
野呂氏という人がなし遂げた功績より、むしろ時間がたっても彼を許すことができなかった遺族がいたという事実のほうが、私の中では強く印象に残っています。