著者自身がモデルの主人公サブローは、愛する妻を亡くして失意のどん底に落ち、のちに「人間として失格者だった」と告白するほど絶望的な日々を送っていた。一時は重度のアルコール依存症で入院するほどで、退院して静養中の頃、知人のKさんから「是非、逢わせたい人」を紹介されることから物語は始まっていく。
その「出会い」がなんと素晴らしいことか。その後サブローと「先生」の交友関係を読むとうらやましくも思うほど素敵である。精神的な病魔と闘うサブローは、「先生」といることでなぜか奇妙な安堵感に包まれる。
・・・「サブロー君、人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。人は寿命でなくなるそうです」(P198)
「先生」のモデルになっている阿佐田哲也の印象といえば、いつも沈鬱な表情で凄味のある「ギャンブルの神様」でこれほど優しく魅力あふれる人物とは知らず意外であった。
また、小説に登場する漫画家Kさん、歌手のIさんの会話がとてもよい。(この二人が誰か推理することも面白い)
ハッとさせられるアフォリズムが随所にちりばめられ内容の深い一冊である。長編小説にもかかわらず気が付いたら一日で読み終えていた。これから伊集院静、阿佐田哲也、色川武大の小説を読んでみたくなった。