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いとま申して―『童話』の人びと
 
 

いとま申して―『童話』の人びと [単行本]

北村 薫
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

若者たちの思いが集められた雑誌「童話」には、金子みすゞ、淀川長治と並んで父の名が記されていた―。創作と投稿に夢を追う昭和の青春 父の遺した日記が語る“時代”の物語。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

北村 薫
1949年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。高校で教鞭を執りながら執筆を開始。89年、『空飛ぶ馬』でデビュー。91年、『夜の蝉』で日本推理作家協会賞受賞。2009年、『鷺と雪』で直木賞受賞。アンソロジーのシリーズにも腕をふるう(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 335ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2011/02)
  • ISBN-10: 4163299203
  • ISBN-13: 978-4163299204
  • 発売日: 2011/02
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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By yukkiebeer #1殿堂 トップ50レビュアー
 北村薫が自身の父が綴った戦前の日記をもとに描く昭和3年から4年にかけての日々。父・演彦(のぶひこ)は童話作家を目指して仲間たちと同人誌活動にいそしむ慶応ボーイであった…。

 北村薫らしい、端正で選び抜いた日本語で紡ぐ昭和の暮らしが、心に沁み入ります。
 丹念に資料を当たり、時代の空気の匂いまでもを再現しようとする努力は、北村のこれまでの作品『鷺と雪』などでおなじみのもの。安心して読み進めることができるといえます。
 淀川長治、金子みすゞ、折口信夫といったそうそうたる顔ぶれと父とが、ほんのわずかに縁(えにし)を結ぶ瞬間が現れるところも興趣を添えます。

 しかしなんといってもこの物語の要(かなめ)は、今は亡き父が若き日に抱えていた、何かを成し遂げたいとたぎらせた青い思いと、そこへたどり着けないということを日々強く承知せざるをえない焦燥とです。そんな父の姿を、痛みと慈しみをもって著者は描きます。
 「若者は、すぐに高揚したり打ちのめされたりするものだ。」(151頁)
 「何者かになりたい、何者かでありたい―――という思いは、容赦なく若者を責める。時にそれに捕らえられ、身動き出来なくなることもある。
  ―――鴻ちゃんは、すでにこんな展覧会を開くまでになったのか。
 それなのに自分はという思いが、鞭(むち)となって心を打つ。」(209頁)

 残念であると同時に、幸いであることに、物語はまだ幕を閉じていません。
 冒頭に姿を見せた≪春来る神≫であるうら若き女性とは、一体誰なのか。
 「物語は、書かれるべく待っている」と最後に記された著者の言葉を信じて、今はその日をじっと待ち続けるしかありません。
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By INAVI トップ1000レビュアー
表題は、父が息子(作者)に遺した辞世の句の前半で、「いとま申して さらばと帰り行く 冬の日の竹田奴かな」が全文。
(注:「帰る」は別の文字が宛てられている)

明治に生まれ、旧制中学で学び育った父の「文学」への関わりが、父の遺した日記を息子(作者)が紐解く形で、話は進められる。日記以外に、息子として父や親族に感じたところ、作者の時代背景等の解説、作家としての作者の感じたところが並ぶ形で、作者が日記に相対したときをシンクロして感じられるつくりとなっている。

日記という狭い窓から、大正後半から昭和初期という、明治と戦前の間の日本の風景、それは戦争とは少し離れた世界で、文学に想いを賭けた学生や若者の生活や思いが、ゆっくりとしかし確実に伝わってくる。
どこまで感じ取れるのか、個人差もあろうし、ジャンル的にも受け止めづらい向きもあると思う。

私個人は、数年前に失くした父が、旧制中学の気風を残す高校に学び、文学を愛したもので、死後に大量の蔵書を残したことから、本書は下地として心に染みやすいものであり、亡き父に想いを馳せつつ、ゆっくりと読み進めた。

現代は、昭和すら、そして多くの日常までもが「いとま申して さらば」の声もなく、いってしまう。
たまたま、そういう思いを強くする出来事も起きた中で本書を読んだことで、今後も何度も読むことで、自分の中の冬の日の竹田奴を思い返す機会を持ちたいとのセンチメントにある。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
基調になっているのは父親の日記だが、それを読み解き丹念に補足しているのは息子の北村薫氏。帯にある通り、まさに「父との共著」なのだ。日記を通してみる父とその両親、弟妹の関係がすばらしい。著者のあたたかい筆遣いから、北村氏もまたこの父と良い関係を築いていたことが伝わって来る。大先輩である父の若き日の姿を、当時の父の両親より年長になった息子が描き出すという構造が、作品に面白い深みを与えている。また、その頃の音楽会や舞台、評判の本、食べ物等を、日記中の父と同じ気持ちで楽しめるような構成になっていることも読者には嬉しい限りだ。ほのかなミステリー風味の仕掛けもあって、最後の頁にあっと思わされた。次作が今から待ち遠しい。
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