エッセイストの阿川佐和子さんが、某新聞のコラムで
「この本読んだら、旅がしたくて居ても立ってもいられなくなっちゃった」
とかなんとか薦めていたので、速攻で買いに行き、速攻で読んだ。
モロッコ、スリランカ、ラオス、ベトナム、ちょびっとメジャーで
韓国、スペイン・・・感性豊かな売れっ子作家なら、
やっぱりこの辺りへきっと行くよな、書くよな、
という場所が予想通りに目次を彩る。
バックパックスタイル、これもなんだか彼女のキャラクターにピッタリだ。
で、肝心の体験記は?というと、旅先で何かに対峙した時の心の描写が
実に自然で、実に素直で、スイスイと文字が体内に入ってくる。
中でもぜひ読んでいただきたいエピソードは
「はつ恋」と「いのちの光」。
「はつ恋」は、タイのカルチャーショックに魅せられた
数々のエピソードが書かれているが、とくに時代の変化を
“清潔感の変化”で測るくだりは、なるほどな、と思った。
最近の若い女の子の多くは、汚いモノ、不潔な場所は絶対ダメ、虫もダメ。
水洗トイレのタイルの上にたかだか蛾が数匹死んでるだけで
彼女たちは大騒ぎ。十年前なら汲み取り式、床は水浸し、
トイレの横にはオシリを拭いたティッシュや紙が山積み、
それを「いや〜ん不潔ぅ〜」と言うのならまだ理解はできるのだが。
角田は女性でありながら、その病的なまでの潔癖性に価値観の変化を垣間見る。
キューバの旅の思い出を綴った「いのちの光」。
社会主義国にあまりいい思い出がない彼女が、初めて目にした理想郷。
偉人であろうが、有名人であろうが、一般人であろうが関係ない。
内側から湧き出る音楽が彼らを突き動かし、10代の若者も
80代のお年寄りも、無心で踊る、ひたすら踊る。
何かを信じて一心不乱に踊るその姿は、凄まじいばかりにかっこよく、
いのちの光が彼女の心の闇を元気に照らしてくれたのだ。
いろんな発見や感動は、その日、その瞬間の鮮度を持っている。
ゆえに旅は、刹那的だ。あの日を期待して同じ場所を再び訪れても、
印象も出逢う人も見えるものも、すべてが確実に違っている。
旅は、はかなき一期一会、だからこそ人は病みつきになるのだろうか。
旅って、そもそもなんだろう?
そんな問いかけが頭を駆け巡る、旅好き必読の一冊だ。