石浦章一教授は東京大学で本来は分子細胞生理学や遺伝子の研究をされてこられた先生でありますが、この先生のお話を拝聴いたしましたのが今から8年前、日経ホールだったと記憶しております。非常に斬新だったのは「劣性遺伝子を劣性とは受け止めず、ある意味進化の中での必要とされた特殊な能力」として位置づけておられるところ、この考え方ににもの凄く惹かれました。
さて、本著ですが「老いない脳」をつくる生活習慣、と題されて文庫タイプで出版されております。しかし、この先生の凄いところは本来ならば「論文」であっても良いような内容をさらっと、凡人の僕にも分かり易く書いて下さるところ、これに尽きます。例えば「100歳まで生きた人は長生きするような生活をしていた」というデータ。これなどはサンプルも少ない中で厚生労働省からの調査資料を活用して非常に説得力ある内容の文章にまとめられておられます。そして、次にでは「老いない脳にするためには…」という観点から人間本来のあるべき姿を提示し、その後に「生活習慣が脳の働きを変える」という結論をきちんと理論的に導きだされています。タバコは止める、酒は毎日1合程度ならば案外危険度は少ない、等々。
後半は「最大酸素摂取量」を常に増やすべく維持することが大切、とこれまた理論的に整理されて記載が続きます。筋力を維持する事と、脳の活性化、これについてこれだけ分かり易く書かれている東大教授の書物はなかなかないのではないか、そう言わせる程の説得力がこの先生の論理展開には非常に深く共感させられるところがあります。
「好きなことをしなさい」と石浦教授は最後の方の章で説かれておりますが、これも理論がきちんと整理されているので頭の中には分かり易く入って来ます。こうした本を見つけると嬉しくなってしまいます。第2版との記載がありましたがもっと売れてしかるべき本、そういう意味で本著を推薦いたします。