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いつか王子駅で (新潮文庫)
 
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いつか王子駅で (新潮文庫) [文庫]

堀江 敏幸
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

背中に昇り龍を背負う印鑑職人の正吉さんと、偶然に知り合った時間給講師の私。大切な人に印鑑を届けるといったきり姿を消した正吉さんと、私が最後に言葉を交わした居酒屋には、土産のカステラの箱が置き忘れたままになっていた…。古書、童話、そして昭和の名馬たち。時のはざまに埋もれた愛すべき光景を回想しながら、路面電車の走る下町の生活を情感込めて描く長編小説。

内容(「MARC」データベースより)

雲を引いて駆ける名馬の幻影さながらに、一両編成の逃げ馬が、王子駅に向かって走り去る―。都電荒川線の沿線に根をおろした人びとと、あてどない借家人の「私」の日々を描き出す、滋味ゆたかな長篇。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 185ページ
  • 出版社: 新潮社 (2006/08)
  • ISBN-10: 4101294712
  • ISBN-13: 978-4101294711
  • 発売日: 2006/08
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 0.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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By シロフォン トップ1000レビュアー
形式:文庫
路面電車の走る小さな町に住む時間給講師の「私」。そこでの暮らしと人々との交流、「私」の内面〜とりとめない回想や夢想、「頭のなかでこねまわしている」こと〜が綴られている。大きな事件も起こらない穏やかな日常を描いた小説。

ワンセンテンスが長い文章も、「私」が「こねまわしている」その内容も煩わしさを感じさせず、彼の頭の中に登場するたとえば昭和の名馬や文学作品を知らなくとも、いつしか「私」の思考に寄りそい、小説世界にひたることを許されている次第である。

「私」の夢想や引用される文学作品は日常の出来事と地続きで、浮いた感がなく、同時に彼の地に足のついた人柄を思わせもする。だから鮮やかな所作を身につけた職人的な町の人々の中に、「私」がいい具合に溶け込んでいるのだと思う。

女性との恋愛めいた出来事も著者らしい慎ましやかな書き方で、なんだかくすぐったくなった。

競馬も走り去る路面電車のスピードもおおむね静的なイメージで語られていくのに対し、動的な興奮の中で締めくくられるラストが印象的。

丁寧な生活を丁寧に綴ったふうのこんな小説を読むと、ぜいたくをした気分になる。
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29 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
エッセイのような不思議な味わいの小説だ。長い文章なのだが、軽やか。主人公は、講師をしたり、翻訳、大家の孫娘の家庭教師などをしながら、のんしゃらんな暮らしをしている。気が向けば、格安で買い求めた中古自転車で遠乗りしたりと。

書かれている世界は、どちらかというと、詫び寂びっぽい。取り立ててこれといった大きな出来事は起きない。平凡な毎日なのだが、その中にだって凝視すれば、出来事は幾らでも転がっている。

彼は、定食屋兼居酒屋で印鑑職人と知合う。銭湯で出くわしたら職人には刺青が彫られてあった。本作の冒頭でそのことが書かれているが、独特の良い文体なんだなあ。主人公は、その職人への荷物を預かるが、職人は行方不明になってしまう。

ほかにも、行きつけの古書店の主人、大家など、東京の下町の人情が、淡々と描かれている。下町のオヤジというと一家言持つベランメエ口調のガラッパチという印象が強いが、本作に登場してくる人物は、大半が、穏やかで、素敵だ。意図的か意図的でないのかは知らないが、背広姿のサラリーマンは一人も登場していないような気がする。

読んでいて、上京したばかりの東京の街や人々を思い浮かべてしまった。買い物に行くと、いつもおまけをしてくれた八百屋のおじさん、鉄製の非常階段をカンカンと音をさせながら、おかずを一品差し入れてくれた階下の大家のおばさんなど…。まだ、コンビニなんてものは無く、正月は店という店はみんな休んじまっていた、あの頃。

主人公のほど良い隠遁感、厭世感、一歩引いた距離感の取り方に、親近感を抱いてしまった。

「なるほど『のりしろ』か。私に最も欠落しているのは、おそらく心の『のりしろ』だろう。他者のために、仲間のために、そして自分自身のために余白を取っておく気づかいと辛抱さが自分にはない」

この一文にすべてが集約されている。

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16 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
つい二年ほど前まで、王子は私の地元だった。

私だけではない、父祖代々住み暮らし、両親のそのまた両親が生まれ育った地でもある。地元民というより、土着民といった感じだ。

そんな私にとって、この本に出てくる素朴で飾り気のない、気の置けない人々は、正に昨日までの隣人であり、出てくる街並は正に故郷である。

高度経済成長やバブルの崩壊を経てなお昭和三十年代の匂いの残るこの土地で育ったものにとっては、東京の激し過ぎる変化の波もどこか遠いものだったが、さすがにに世紀を跨ぐとそうもいってられなくなってきたようだ。従って、ここに書いてあるどこか懐かしい東京というのも、いつまで残っていられるか覚束なくなってきているのが現状だ。

人通りのめっきり少なくなった商店街、迷路を思わせる曲がりくねった路地、バラックに毛の生えたような波トタンの家、黒板塀に囲まれた猫の額のような庭、零細を絵に描いたような家内工業の街工場。ページをめくる度に、街に漂う総菜の匂いや、機械を回すモーター音や、隣人たちのざっくばらんな話し声が蘇る。

地元以外の人には、二度楽しめる読み方があるので、却ってお得かも知れない。

一度は知らない街の様子を想像しながら読む。そのあと実際に都電に乗って、訪ねてみる。今はキリンビールの工場も移転するなど、本書が書かれた時点からの変化もあるので、それを確かめるのもよろしかろう。

そのあともう一度読むと、著者の視点と読者自身の視点のずれ、或は著者が書いたものと書かなかったもの、著者の創作と実際の姿の間から立ち上る立体的な街の姿が、更に読書に深みと奥行きを与えてくれるだろう。

私達の街からこんな魅力的な本を創ってくれたことを、著者に感謝したい。
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ふつー
咲ちゃんにならってタイトルをつけるとしたら「ゴンドラの窓から」かな? それよりも! 王子にモノレール、できっちゃったよ!
投稿日: 2009/7/21 投稿者: うんの
ラストが
だらだらと続く感じですが、
それは全てラストに向かっての助走なんだと思います。
とても好きな雰囲気でした。
投稿日: 2009/3/9 投稿者: ひつじ日和
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投稿日: 2007/12/10 投稿者: 自灯明法灯明
ゆるやかでいて、美しい。
派手な修飾語があるわけでもなく、やたらと文体をこねくりまわしているわけでもないのに、堀江氏の書く文章には静かな美しさ、抑制された故の日本語の輝きがある。センテンス... 続きを読む
投稿日: 2007/6/19 投稿者: らいらっく
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とある昔かたぎの職人さんとの繋がり(あるいは不在からくる想い)を軸に、穏やかな川の流れに反射して光る様な、日常におけるささやかだけれど心の何処かに触るモノゴトを写... 続きを読む
投稿日: 2007/3/28 投稿者: cobo
なつかしい感覚です。
なつかしいものを感じたい人、

また、特に王子在住の人ならひときわ懐かしく思えるストーリーです。... 続きを読む
投稿日: 2006/10/5 投稿者: らくだ77
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