これは社会変革の本である。それも極めて根本的な変革について語った本だ。著者が立ち上げた団体ティーチ・フォー・アメリカ(TFA)は、教育を変えることで社会を根本から変えようとしている。
TFAのプログラムでは、アメリカのトップクラスの大学生たちが卒業後に2年間、恵まれない環境にある各地の学校に出向いて授業をする。貧しさゆえに良い教育を得られてこなかった子供たちの学力・進学率が劇的に向上する。学ぶことの楽しさを知り、社会に希望を持つようになり、彼らの人生そのものが劇的に変わる。・・・教育機会の格差をなくすことで、長期的には経済・社会そのものに、ものすごく大きなインパクトが生まれる。
それと同時に、貧困地域で「教えること」を通じて、若者たちも成長する。恵まれない境遇にある人々を思いやる心を持ち、世の中の問題に対する意識を高め、社会を自分たちの手で変えていこうという志と情熱を燃やすようになる。そして2年間の後で彼らは、教育界はもちろん、ビジネス、政治、法曹、等々各界の第一線で活躍するようになるのだ。これもまた、国のあり方に根本的な影響を与えていくにちがいない。活動はアメリカ全土に広がっており、財界や有名人も積極的に協力。非営利団体でありながら「理想の就職先」第10位に選ばれるほどの勢いだ。
本書は、そのような社会に根本的な変革をもたらしつつあるTFAの軌跡を創業者自身が語ったもの。21歳で「将来何をしたいのかわからなかった」「大学始まって以来といっていいほど世間知らずだった」著者が、アイディア一つでTFAを立ち上げ、たびたび障害にぶつかりながらも、同じ思いを持つ仲間たちとともに乗り越えていく。その姿はエキサイティングで、感動的だ。
読み物としてのおもしろさ・楽しさに満ちた本だが、何か新しいことにチャレンジする人にとって役立つヒントや教訓も詰まっている。志ある仲間を集め、協力者を探し、企業を巻き込んでお金を集め、ノウハウを提供してもらい、政治・行政やメディアとうまく付き合い、マネジメントのスキルを身に付けて、、、著者ウェンディ・コップ自身の成長の軌跡から学べることも多いと感じる。本の帯に「世界は本当に変えられる」とある。TFAはこれを証明している。前向きに社会に関わっていく勇気をくれる本だ。