本書は、小学生を対象に書かれた4冊シリーズの2冊目で、「1桁の正の整数のわり算」を主に扱っている。「算数で大事なことは、自分が知っていることを大切にすること」という、本シリーズのコンセプトが本書にも貫かれている。
本書では、「かけ算の考え方(「何がいくつならいくつ?」)がわかれば、わり算の考え方(「そこには、なにがいくつあるのかな? それだけでいいのかな?」)もわかる」というアイデアに基づいて、(1冊目同様)大人には到底耐えられないと思われる冗長さで、辛抱強く「わり算の考え方」を伝えようとしている。
本書の内容に関して1つだけ失敗ではないかと思うのが、本書の前半において、「10÷2=5」に対する「10個を2つにわけるとそれぞれ何個か」という概念化と「10個から2個ずつとっていくと何組とれるか」という概念化が併存していること。この2つの概念化がどちらもそれなりの説得力をもって存在しているということ自体が、わり算がわからなくなる最大のポイントではないかと思う。本書でも最終的にはこの点に戻ってくるわけだが、前半部で何の説明もないまま両者が併存しているのは致命的な作戦ミスではないかと思う。
正直、この本は、算数・数学を苦手とする子供たちを救えないのではないか、と思う。『数学でつまずくのはなぜか』(小島寛之 2008年 講談社)なんかを読むと、算数・数学を苦手とする子供たちが算数・数学を苦手とするまさにその理由は、「正しい考え方が身についていないから」ではなく「間違った考え方を身につけてしまったから」のように思う。算数・数学を苦手とする子供たちを救うために重要なのは、著者のような本質を掴むことに秀でた人の頭の中を見せることではなく、既に身につけてしまった「間違った考え方」を教える側が理解することではないか、と思うのだ。
シリーズ3冊目では、「2桁以上の数(おそらく正の整数)の計算」を扱うようだ。