時は安政二年の江戸大地震の翌年。土佐室戸のクジラ漁師と江戸深川のこどもが、今の用語ではツアーコンダクターに導かれて伊勢で出会う不思議物語。
脇役を固めるのが、江戸の水売り、深川一の両替商、長屋の差配、火消し、さらに土佐からは船大工。伊勢では能登の御陣乗太鼓も。あと銭売りと駕篭かきが加われば一力小説のオールスター勢ぞろいだろう。
東西を結ぶ海の道を航海するのは、品川から出帆する五百石積みの快速船七日船とクジラを追うため時速9キロを出せる八丁櫓船。まことにスケールが大きい。
話をつなげる仕掛けの夢見は繰り返された分だけ賛否の分かれるところだろうが、最後の20頁に描かれる正月元旦の土佐の海の夜明けと夢の実現シーンは圧巻である。