「静かな監獄」
小田菜摘達は受験を半年後に控えている。勉強ばかりの日々だが、菜摘は友達の麻里奈のおかげで何とか頑張っていた。しかしある日を境に、奈摘はクラス中から無視されるようになってしまう。クラスの一匹狼・水原さんは言う。「これはゲームなのよ」と……。水原さんの存在がこの物語をいろんな意味で引き立たせている。この後、奈摘は麻里奈と、クラスメイトとどう関わっていくのだろうか。思わせぶりなエンディングはなかなかよかった。
「哀しい勝者」
勝ち組。それは常に一流の道を歩き、富も地位も手に入れた人のこと。それを目指す吉野紗綾は、負け組のくせにヘラヘラしている早苗が気に食わない。紗綾の親の会社と、友達の萌の親が勤める会社との間にトラブルがあったのをきっかけに、紗綾は萌から嫌がらせを受けるようになり……。この実力・権力主義の社会。それは親だけでなく子ども社会にも影響を及ぼしている。本当の意味での「勝ち」「負け」とは何なのだろうか。そんなもの誰が決めるのだろうか。
「つながらない心」
中谷千世は、携帯電話を持っていないせいでクラスメイトからイヤミを言われる。しかしそれをいつも守ってくれるのが、友達のまどか。ようやく携帯電話を手に入れ友達の輪も広がった千世だったが、まどかとトラブルを起こしてしまう。そして裏学校サイトに書き込まれる千世の悪口。まさか、まどかが……? これはかなり現実にありそうな物語だ。携帯電話、特にメールは相手の顔も声も分からない。現代になって生まれてきた新たな闇と言える。
「ひび割れた仮面」
本多詩緒のクラスにやってきた転校生・貴乃巴は、茶髪にメイクをしたキツい性格だった。異様な雰囲気の中、突如としてクラスを騒がせ始めた盗難事件。クラスメイトは巴が犯人に違いないと言うのだが、詩緒はどうしても確信を持てない。なぜなら……。親からの暴力と、クラスメイトからの偏見。その狭間で心を閉ざしていた巴の表情は、見ていて凄絶で悲しかった。もうこれはいじめというより人間のドラマだ。
「ひび割れた仮面 エピローグ」
巴が町で見かけた、工事現場で働く父親。詩緒は「一緒に会いに行こう」というが……。
今回のベストワンは、何と何と……全部! どうしても選べなかった。急に物語の内容がよくなっていてかなり驚くと同時に、こんな心にくるいじめを期待していたため、嬉しかった。心なしか絵もよくなってきたようだ。ただの「いじめ」にとどまらないストーリーだった。このままレベルを維持した次巻を待つ。