出版社/著者からの内容紹介
私たちの人生にとって大切なのは、人間経験の深まりである。それが人格をつくり、自立した個人を育て、生きる道を明らかにする。私たちは、その「経験」を、どのように深めてきたか。著書は自らの「経験」を、問い直しながら、日本的な人間関係、社会組織、情緒観などを省察し、日本人の“生”のありようを、真摯に追究する。そのとぎすまされた批判力と、みずみずしい感覚、生を凝視してきた精神の深みは、根源的な問いへの回答を用意するだけでなく、私たちに生きる勇気を与えてくれる。
思索と「経験」の深みから――本書の主題は、「いかに生きるか」ですが、それは、自分がいかに生きたかを包み隠さず、凝視する精神と1つになっています。このような点において、森有正ほどに、自分をかざらずに、裸の1人の人間として、自由に、勇気をもって、この困難な問いの核心に侵入できる知性は、存在しないのではないかと思います。すべての硬直した思考やイデオロギーから自由なところで、しばしばキリスト教的有神論からさえも自由なところで、生き生きと森有正は、生きることの問題について語っています。そこにみられるとぎすまされた批判力と、みずみずしい感覚は、読者の心をとらえずにはおかないでしょう。知性の高みが、経験の深みと、見事に一体化しているのです。ここに森有正の独自な世界があります。――解題・山形孝夫
著者紹介
1911年東京に生まれる。東京大学文学部仏文科を卒業。東京大学助教授を経て、パリ大学・国際基督教大学教授を歴任。1976年死去。「経験」を土台にすえた独自の思想世界を形成し、洞察力に満ちた鋭い発言を行なって、感動をよんだ。主な著書に、『生きることと考えること』――講談社現代新書、『近代精神とキリスト教』――講談社、『旅の空の下で』『遙かなノートル・ダム』『バビロンの流れのほとりにて』――以上、筑摩書房――などがある。