本書でいう「いいかげん」とは、「無理しない、こだわりすぎない、欲張らない、つっぱらない、頃合に、融通をきかせる、ほどほどに」(本書背表紙より)という想いがこめられており、疲弊気味の今の社会に対する一種の清涼剤のような言葉である。
この「いいかげん」という言葉の持つ意味合いを数々のエピソードを交えて伝えようとしているのだが、どうも自身の感性にはピンとこなかった。
例えば、「相手を批判するときは、逆にこの人にいい点はないだろうかと考えるようにしている。『いい加減」が大事なのだ」(P182)、「たくさんの人に支えられている。(中略)支えたり、支えられたり、『いい加減」が大事なのだ。」(P190)、言われれば確かにそうなのだが、あえて「いいかげん」という言葉を使うこともないと思ってしまったり、別の言葉の方がフィットすると感じてしまったりすることが多い。
エピソードそのものは温まる話であるが、つまるところ「いいかげん」とは冒頭に述べた想い以上のものでも以下のものでもない。仮に本書から「いいかげん」という言葉を一切削除したときに、このメッセージが最もフィットするかどうかといえば疑問が残る。
医療の現場に携わっていると、「がんばらない」、「あきらめない」、「いいかげん」、「ホスピタリティ」というキーワードが当てはまりやすいのは事実だと思いますが...
個人的に「いいかげん」とは「ゆとり」のことだと考えており、「自分の気持ちに正直で要ることができるゆとり」、「それを自身が素直に受け止めることができる心のゆとり」、「そしてこれらを互いに尊重できる人間社会のゆとり」なのではないだろうか。