神社のこま犬の「あ・うん」のように
空気で相手の心情が理解できるほどの
固い友情で結ばれた門倉と仙吉。
親友の妻を想い続ける情熱を
抑えて抑えて,快活にふるまう門倉の心情がせつなく胸に痛い。
それを知っていて静かに受け入れる仙吉と妻たみ。
昭和初期の世相を背景にそれぞれの心の揺れと葛藤を
丁寧に紡いでいく。
愛しているからと言って
すぐに肉体関係になってしまう人たちばかりではない。
こんな風に胸に秘めたまま見守る愛があっていい。
誰が欠けてもいけない三人のあたたかい関係。
心に沁みいる向田さんの筆致。
人生は捨てたものではない。
こんなあったかい人達がいるから生きていけるのではないか。
そう教えてもらった大切な大切な一冊。
過去に読了。再読。