2011年週刊ポスト上で大好評だったものをまとめた1冊。
現在、日本で最も裕福な男・ソフトバンクCEO・孫正義の自伝的作の単行本化。
佐賀の田舎で極貧の中でブタと一緒に寝起きした、
密造酒を作って売っていた、危険な炭鉱事故で親戚を亡くした・・・など「今だからこそ話せる話」がどんどん出てくる。親戚のおじさんが元ヤクザだとかそんな話。
もちろん当時の日本はどこでもそういう地域があったし、そうでもしないと生きていけない時代でもあった。
事実孫の父は事業を起こして成功した後はそういった暗い過去は完全に封印してしまった様にも見える。
しかしさすが佐野!
孫本人はもちろん、親戚や同級生など周囲の人をこれでもか!と取材してるので、ブレがない。
佐野は「孫は本当に面白い」と何度も感心しているが、僕はそんな佐野眞一の方が凄いと感心してしまった。
ここには右翼的でも在日的でもない、「人間・孫正義」が見える。
例えば孫は「在日韓国朝鮮人の息子で反日本的」「非常にシビアで貪欲なビジネスマン」とネットで叩かれることが非常に多い。
そして佐野は後者についてはあっさりと認めてしまっているようにも見える。
むしろ佐野は「孫のビジネス」についてはまったく興味がないようだ。そして孫に迫っていっている。
孫はすでに社会的に成功し有名になってから、たった1人でひっそりと故郷・鳥栖を訪れていたようだ。極貧の中、大嫌いだった故郷・・それでも忘れられない故郷・・だからこそ1人でひっそりと訪れる・・そんな孫はとても人間らしく魅力的だ。
前者については「安本と言う在日朝鮮韓国人にも思われそうな苗字でありながらそうバレないようにびくびく暮らしていた」「祖母のキムチの匂いが大嫌いだった」と言う10代の孫、「son」と堂々と自身のアイディンティティを名乗ったアメリカ留学時代、そして日本人の女性を妻とし、日本で生きていくことを決め、日本国籍を取得した「孫正義」そしてその変遷が見える。
孫正義と言う男について、好き嫌いは別にしてまずは読んでみる価値のある1冊。
この本は単純に面白い。
そしてこういったものを書かせる孫の度量の大きさを感じると共に、こういったものを書かれても既にビクともしなくなった「孫正義と言うブランド」に対する孫の自負を感じた。
これはパチンコ屋として大きな成功をしながらもその出自や身分の不安定さを感じてたように思える孫の父とは対照的である。
また本著は
在日中国人で国民栄誉賞を獲得した王貞治(日本人だと勘違いしてる人が多いが、王も王の3人の娘も現在でも中国人である)と華僑である父・王仕福を描いた「百年目の帰郷 鈴木洋史(21世紀国際ノンフィクション大賞)」に通じるものもある。
合わせて読むのも良いだろう。
本著は、孫の育った貧しい九州の田舎の豚の泣き声や密造酒の匂いすらする。そして、孫の持つ凄まじいパワーの背景をやっと分かったような気にさせられる。
面白い!!