本作をご覧になられた方々は欧州と我が国の放送文化の水準の差を思い知ることになるでしょう。過去にはある程度の良作を提供してきた日本のテレビ放送も、今やバラエティ番組の類いはもとより、ドラマ(になっていないドラマ)の制作能力及び意欲は衰える一方で、観るに耐えない駄作のオンパレードと化しています。70年代初頭頃、「神様」と称されるほどに日本の映画ファンから持て囃されたベルイマン。家族の葛藤、確執といった日本人が好むテーマを扱ってきたからでしょうが、後に映画化された本作がテレビドラマだったところに彼の国の民度の高さが窺えます。ちなみに大名作「ファニーとアレクサンデル」も当初はテレビ用に制作されました。本作は一話あたり3つ程度のシーンで構成され、各シーンは人物のダイアローグをほとんどワンカットで撮っています。平坦な結婚生活を送る中産階級の夫婦を覆う閉塞が破局を齎すという通俗的なプロットが、人物の葛藤を露わにする練られた会話と俳優の熱演によって緊張感に満ちたドラマとなっています。古典的ドラマトゥルギーではありますが(一見似たような作りの『渡る世間』とはモノが違う)、本国では社会現象を引き起こす大ヒットとなりました。およそ日本では考えられないことでしょう。作中多少の中弛みが気になりますが、成熟した大人が楽しめる秀作です。残念ながら我が国の映画・放送関係者には今のところこのような志を期待できませんが、せめて我々視聴者の意識を変える契機として本作が多くの人々の目に触れればと思います。海外ドラマというと昨今は派手な米国ドラマか、甘ったるい韓流ドラマぐらいしか見かけませんが、たまにはこういう作品で目の保養をしては?